考えるイヌ〜桜井政成研究室〜

研究メモ、ゼミなどの教育活動、その他関心事など。

ラーニング・エンリッチメント財団(LEF)訪問

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今日おじゃました社会的企業、ラーニング・エンリッチメント財団(Learning Enrichment Foundation; LEF)では、まずその敷地規模に圧倒された。広い。広すぎる。廃業した工場をリノベーションしているらしい。

この団体は、一言でいえば、コミュニティベースで社会的包摂に取り組む社会的企業なのだが、そのサービスメニューの幅広さに驚かされる。しかし、もともとは、1970年代に、子どものための多文化な劇場を一年限りの助成金を使って活動したことからスタートしたという。

外観はこの様な感じ。看板に、様々なサービスが記載されている。
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入ったところには、リソースセンターという名前で、無料で使えるPC、FAX、コピー機、電話が置いてある。セツルメントで行っているため、無料とのこと。
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もともとはここは、工場地帯であったが、1970年代後半に、閉鎖され(より郊外へ移っていった)、大量の失業者が生まれた。そこで、LEFは、すぐに技能訓練や若者のカウンセリングを提供し、1980年代に入ると、保育所を開設。その後、次々にサービスを拡大させたのだという。

LEFは、次のようなミッションを掲げて、活動を行っている。
「個人や家族がコミュニティの社会的・経済的発展に向けての価値ある貢献者となるよう、統合的・全体的なコミュニティへの対応的的な取り組みを行います。」

現在では、トロント郊外で工場跡地を使い、地域向けのアクティビティの他、就労・起業支援、移民向け語学学校と定住支援、保育所運営(施設外にもあって計15ヶ所)などなど、極めて幅広く活動している。

毎週木曜がマーケットの日とのことで、様々な店が施設内に出ていた。それらの店も起業支援の対象なのだとのこと。おそらく施設の利用者や地域住民が買いに来ているのだと思う。テーブルに座って、コミュニケーションが生まれている。(この写真はマーケット閉店間際なので人がまばらです…)
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この写真は、団体内で立ち上げた自転車修理会社。
中古・新車の自転車も、販売している。
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奥のスペースでは、レンタル自転車会社と提携し、トロント中のその自転車の補修を、一手に請け負っているという。この取り組みは新聞(トロントスター紙)に取り上げられている→http://www.thestar.com/news/gta/2012/08/08/art_of_bicycle_maintenance_puts_young_workers_on_a_new_path.html
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とにかく、様々な企業から、支援を受けたり、業務提携をしている。思わず、どうやってつながっているのか?と聞いたが、ケースバイケースだそう。

フォークリフトの免許が取れる訓練講習もあるそう。ここもどこかの企業の支援を受けている。
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ここはキッチンで、調理の別会社を作って運営している。このようにランチも販売しているが、ケータリングも行っており、運営しているすべての保育園の昼食はここで作られている。
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LEFでは様々な企業と提携し、自転車修理、調理師、保育士、清掃、事務受付といった業務について、組織内で就労支援をしている。面白いのは、それらの雇用訓練は講習とは別に、若者向けの23週間の有給のインターンシッププログラムを持っていることだ。有給であるところは極めて興味深い。また、刑務所から出てきたばかりの若者のトレーニングもここで行っている。普通ならば45.7% の若者は再び罪を犯してしまうのだという。しかし、ここでトレーニングを受けた若者の再犯は3.5%におさえているという。

移民向けの支援も、ここでは総合的に行われている。語学学校が施設内にあるほか、生活相談も受けられるし、もちろん就労支援も受けられる。この地域は、移民が多い。それに関係してか、貧困の問題を抱えた地域でもある。トロントでもっとも貧困な地域であると共に、オンタリオ州でも有数の貧困地域であるそうだ。

両脇に移民向け英語教室の部屋(ESL。トロント市が行っているもの)。分かりづらい写真ですね…。
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このようなコミュニティベースで社会的包摂に取り組む社会的企業は、カナダだから存在しているのであって、日本には必要ないのだろうか?

いやいや、そんなことは無いと思うのだが。
高齢化・過疎化・都市化で地域コミュニティが弱体化する中で、既存の町内会や、社会福祉協議会では対応しきれない問題が増えるだろう。そのときに、困難を抱えた地域で、総合的にコミュニティディベロップメントを行う社会的企業、という、LEFのようなモデルは、これからの日本が抱える課題、解決策を先取りしているようにも思う。

※ちなみに、ここでの「コミュニティベース」というのを、独断と偏見で定義するならば、ガバナンス・ミッション・サービスにコミュニティがあるということになるか。すなわち、理事会に一定数、コミュニティ代表がいて(ガバナンス。LEFも理事の4割が地域代表)、団体の目的にコミュニティに寄与する事が明確に書かれており(ミッション)、またその活動対象もコミュニティの住人である(サービス)ということだ。あれ、意外に、いい定義かも。どこかで使おう。

また、この団体がさらに興味深いのは、こうしたコミュニティベースでの活動に力を入れている一方で、最近では積極的に社会起業家支援・社会的企業同士の連携に力を入れている。インキュベーションオフィスがあるし、また、「ソーシャルエンタープライズ・トロント」という非営利の社会的企業のネットワークの事務局を担っている。


「日本ではこのようなコミュニティベースの団体が社会的企業化し、支援も行うのは珍しい」と話した(例えばこんな社会福祉協議会は、日本では想像できないですよね)。すると、「では、日本の社会的企業はどうやって立ち上がっているのだ?」と逆に聞かれて、答えに困った。

こうした、コミュニティベースの社会的企業が、社会的企業を支援することには、いくつものメリットがある。まず、対象がはっきりしていることだ。その地域の問題を解決することや、問題を抱えた人々による組織設立を支援する、ということになる。また、老舗なので足場がしっかりしており、「支援する組織が支援を必要とする」という状況に陥らない。また、同時に、積み重ねたリソースも多様に持っているので、それを活用することができる。

トロントは社会的企業を支援する団体(中間支援団体)が、とにかく多い。しかし、面白いのは、例えばこのLEFのインキュベーションオフィスの中に、ある中間支援団体のオフィスが入っていたり、と、相互に関わり合っているところだ。縄張り争いはあまり気にしていないのかもしれない。それも、組織の基盤がしっかりしているからなのか?

まだまだ、この界隈のことの理解を深めていく必要がありそうです。

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