考えるイヌ〜桜井政成研究室〜

研究メモ、ゼミなどの教育活動、その他関心事など。

コミュニティを単位とした問題解決のあり方

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東日本大震災後、被災者の方々と関わる中で痛感したのは、問題解決に向けたコーディネート機能の社会的な欠如だ。行政と住民の間や、住民同士でも、なぜ、こんなに問題がややこしくなってしまうのだろう、と心を痛めることが多々あった。

カナダに来て、こちらではそうしたことの方法論が確立され、そして研究やトレーニングも、大学やNPOがさかんに行っていることを知った。いや、知識としては、前から知ってはいた。ただ、それがどこまで実行力を持っているのかは、こちらに来るまで明らかではなかった。(例えば「ショー・ザ・フラッグ」などの投稿をご参考のこと)

トロント市の政策でも、「コミュニティ」が社会問題解決の単位として、再注目されている。それへの賛否はあるようだが、しかし市民セクター側での実践や調査にも分厚い蓄積がある。

こちらのNPOの人と話した時、話題に出たが、トロントには地域ごとで、なぜか、コミュニティデベロップメントの中心となる「大規模NPO」が存在している(例えばこちらの以前の投稿をご参考)。そして、何かプロジェクトを始める際には、必ずといっていいほど、調査をする。「違う」ことが前提の多文化社会では、ステイクホルダー間で共通認識を得るためには、「見える化」する必要があるのだ。これは、「いがみあい」を避ける意味でも、日本でも十分検討するべきありかたではなかろうか。

また、そのためか、NPOの調査能力は高い。それを、マスコミも、しょっちゅう取り上げる。昨日もトロント・スター紙(最有力な地元紙)に、ある病院の研究部門が行った、トロント市内の地域ごとの「健康度調査」の結果が、大々的に掲載されていた。それらの調査結果はたいがい、一般にも公表されていて、再分析がしやすくなっている。ちなみに世界価値観調査によれば、日本はマスコミの信頼度が高く、チャリティ組織への信頼度は低い。カナダは、その真逆となっている。

これには、大学の人材輩出機能の影響も無視できない。大学院での専門教育の成果を活かし、院卒で働いているスタッフが数多く存在している。こちらの大学では、研究の理論や方法論ももちろんきっちり教えるが、しかしそれと同じぐらい、研究成果をどう社会に活かすのか、ということも重視するのだそうだ(もちろん、その難しさはカナダでも大いに感じられている。例えばこちらの投稿を参照)。

トロント大のアンドレ・ソレンセン先生と話した時も、日本のコミュニティ支援がカナダと異なる点は、一番は、プロフェッショナルがいないことだ、と指摘された。先生は日本に滞在されたこともあるし、日本の現状をよくご存じだ。町内会・自治会はソーシャルキャピタルを生み出しているが、問題解決能力は低い、と。(あと、「日本のコミュニティ活動は義務的なことが多いよね〜」とちょっと苦笑い気味に言われた)

コミュニティディベロップメントのためのツールも、数々開発されている。日本で大流行している「地域の資源を活かした地域活性化」の元ネタとも言える、アセットベースのコミュニティディベロップメントについても、資源のマッピング技法なんてのがあった。

また、日本の防災関係では、コミュニティの「レジリエンス」なんて言葉が大流行だが、地域の能力を高める「コミュニティ・キャパシティ・ビルディング」の手法や評価方法は、こちらでは数多く資料やWSがあって、日本でも十分応用できそうだ。

それらがどこまで用いられているか、役立っているか、そして日本にも応用できるか。まだまだ、勉強しなければならないことは多い。

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