考えるイヌ〜桜井政成研究室〜

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NPOと行政の協働が(日本では)難しい訳(その1)

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NPOと行政のパートナーシップの必要性が叫ばれて久しい。
政府も「新しい公共」議論の中でNPOの公共サービスでの役割を重視しつつある。

しかしながら未だにそれが「課題」として語られるのはなぜだろうか。なぜ、成功事例が少ないのであろうか。
ここでは、そもそもNPOと行政組織とが原理的に「水と油」であることを、経済社会学と組織社会学の理論から説明してみたい。

まず、経済社会学的な説明である。

ヨーロッパの研究者達は、第三セクター(NPOが活動する領域のこと)を、アメリカモデルとは異なるかたちで定義づける。代表的なのはペストフ(1992)の「福祉トライアングルモデル」である。ペストフはカール・ポランニィの経済社会理論をベースにしながら、経済社会主体を表現するために、三角形を描き、さらにそこに、公式/非公式、公共/民間、非営利/営利という三本の補助線を引き、区分している(図参照)。

福祉トライアングル

このモデルにおいて、公式で公共で非営利な主体として政府が、公式で民間で営利な主体として私企業が、非公式で非営利で民間の主体としてコミュニティが付置されることになる。このとき、行動原理もポランニィの概念から説明される。政府は予算配分を通じた再配分であり、私企業は交換、コミュニティは互酬である。

さらに、NPO(第三セクター)はこのモデルでは、公式、非営利、公共という3つの軸で区切られた領域を中心としながらも、さらにはその厳密な業域を越えて、国家や市場、コミュニティの領域までも広がりを持つと考えられている。これは第3セクターが他セクターとの媒介領域(Evers,1995)でもあることを示している。つまり、NPOは政府とは委託事業等で協働関係を築き、また市場からはサービスの対価を得る。そして、コミュニティからは寄付やボランティアといった参加を得ており、それぞれの領域とは密接に関わっているのである。

さて問題は、こうした「理念型」が日本のNPOにも当てはまるのか、ということである。
日本の特殊性は、NPOが非営利組織(セクター)全体ではなく、特定非営利活動法人と法人格を持たない市民団体に限定されて定義されがちだと言うことである。特定非営利活動法人がNPO法人と略称されることが多いのが象徴的である。

そのNPO法人と市民団体の多くは地域に密着した、非常に小規模な組織である。地方自治体がNPOと協働の取組を行おうと考えたとき、その対象となるのはそうした団体になる。このとき、“NPO”は媒介領域ではなく、むしろコミュニティに近い原理を持った組織であり、その原理は「互酬性」を強く帯びている。

すなわち、互酬の性質を持つNPOと、再配分を旨とする政府ではそもそもの行動原則が異なっており、それが「協働」を行う上での「ズレ」を生じさせることになると考える。
たとえばNPOは協働事業において「対等」を強調しがちである。これは互酬性の考え方からすればもっともである。しかし行政側はそもそも公共サービスのプロバイダーとしてしか協働主体を考えていないから、対等と言われても困る。どちらが悪いと言うことではなく、相容れないのだ。

ではどうすればよいのか。
その答えを考える前に、次のエントリで組織社会学的観点から、NPOと行政機関の「相容れなさ」をさらに考えたいと思う。

<参考文献>
Evers, A. (1995). Part of the welfare mix: The third sector as an intermediate area. Voluntas, 6, 159–182.
Pestoff, V. (1992) Cooperative social services: an altmative to privtization, Journal of Consumer Policy, 15, pp.21-45.

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