考えるイヌ〜桜井政成研究室〜

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食料安全保障の意味ってそうだったのか

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トロントのコミュニティ支援のNPOや社会的企業では、食(と農)が重要な柱になることが大変多い。フードバンクなどはその典型例だ。当初は日々の食事にも事欠く人達が多いのだなあとのみ考えていたのだが(それはそれで間違いないのだが)、どうもこれは、食と農に関しての根本的な国の考え方と、それを反映した政策に違いがあることが、だんだん理解できてきた。

とりわけ、キーワードとして頻出するのが、フードセキュリティ(food security=食料安全保障)だ。「食料安全保障って、あれでしょ。食糧自給率がどうとか…。」というのが、多くの日本人の、それも、まだ関心があって、理解している部類の認識ではなかろうか。かく言う私もそうだった。しかし、カナダでは、もっと言えば国際的には、食料安全保障の概念・捉え方は大きく異なっている。ここではその日本の特殊性を理解するために、カナダと日本での概念定義の違いと、それに基づく政策展開についてまとめておきたい。

食料安全保障の考え方

日本における食料安全保障の定義と世界的な定義

まず、日本での、特に国の捉え方について、整理しておこう。

日本の農林水産省は、同省のサイトにおいて次のように述べ、食料安全保障を定義している。

「食料は人間の生命の維持に欠くことができないものであるだけでなく、健康で充実した生活の基礎として重要なものです。したがって、国民に対して、食料の安定供給を確保することは、国の基本的な責務です。
 食料の多くを輸入に頼っている日本では、国内外の様々な要因によって食料供給の混乱が生じる可能性があり、食料の安定供給に対する国民の不安も高まっています。しかし、そういった予想できない事態が起こった際にも食料供給が影響を受けずに確保できるように準備しておかなくてはなりません。
 食料安全保障とは、このように予想できない要因によって食料の供給が影響を受けるような場合のために、食料供給を確保するための対策や、その機動的な発動のあり方を検討し、いざというときのために日ごろから準備をしておくことです。」



これに対して、国際的には、国連食糧農業機関(FTO)が、1996年の世界食料サミット・ローマ会議で提示した定義が一般的である。それは以下の通りである。

食料安全保障は,すべての人が,いかなる時にも,彼らの活動的で健康的な生
活のために必要な食生活上のニーズと嗜好に合致した,十分で,安全で,栄養
のある食料を物理的にも経済的にも入手可能であるときに達成される(注1)。

(注1)訳は、外務省2013年10月資料『わが国と世界の食料安全保障』に基づく。



国際的な定義との乖離については、外務省でも認識しており、その理由として次のように述べている。

「上記の定義に従って日本国民の食料安全保障について現状の評価を試みるなら、現在、国民のほとんどは、「活動的で健康的な生活のために必要な食生活上のニーズと嗜好に合致した、十分で、安全で、栄養のある食料を物理的にも経済的にも入手可能である」と考えられ、食料安全保障は概ね確保されていると言える。」

※平成22年10月 外務省「食料安全保障に関する研究会」での報告である「我が国の『食料安全保障』への新たな視座」より



ただしこれは、あくまでも外務省の見解なので、正式な政府のものとはいえないかも知れない。しかしながら、食料自給率にこだわる農水省の姿勢とも合わせて考えると、これは政府が一定、共有している認識だと想定することが出来よう。

こうした「(国際的な定義での)国内の食料安全保障の無視」については、食料面から貧困者支援を行っているフードバンクの全国組織である「セカンドハーベスト・ジャパン」が、日本における相対的貧困率の高さから、「捨てられている食べ物と、足りていない食べ物の問題」が存在していることに言及している(注2)。そして、団体資料の中で、「フードセキュリティーの無い人々」(原文ママ)が日本にはおり、それは「1日3食を確実に取ることができない人。日本の市場経済が想定しなかった人々、市場経済の枠外で生活する人々とも言える」として、「自立支援策を講じ社会復帰するまでの間を食料支援をする」ことが団体の活動であるとしている(注3)。

注2:セカンドハーベスト・ジャパンのサイトの表現より。http://2hj.org/problem/
注3:セカンドハーベスト・ジャパン団体資料より。http://www.maff.go.jp/j/study/syoku_loss/03/pdf/data3-1.pdf

カナダにおける食料安全保障の定義と国内向け政策の展開

これに対し、カナダでは、1996年にローマで開催された世界食糧サミット(WFS)の、国際社会は2015年までに、栄養不良の人々の数を半分にするべきだとする声明に反応するかたちで、1998年に「食料安全保障のためのアクションプラン」が策定されている。

それは、国際貿易と環境問題についての合意、人権(女性と子どもの権利を含む)に関する協定、社会開発、教育、住宅および市街地開発を含む食糧安全保障に影響する、既存の国際公約の広い範囲に基礎を置きます。
さらに、それは、カナダ自身の健康用栄養のような現在の内政対策から流れるコミットメントおよびアクションに基礎を置きます:
行動計画;
強さを集めること:
カナダのアボリジナルの行動計画;
漁業法を含む立法への修正;
また、カナダは経済、社会および環境対策、および政策を発展させています。

The first six pillars were developed at the International Forum for Food Sovereignty in Nyéléni, Mali, in 2007. The seventh pillar – Food is Sacred - was added by members of the Indigenous Circle during the People’s Food Policy process.



残念ながら、政府文書はおろか、学術的な研究論文においても、日本ではこのように質量を共に考え、社会的正義の観点も踏まえた、包括的な食料安全保障の問題を議論しているものは管見の限りだが全くないように思われる。

この視点はカナダのそれと比較した時(さらには国際的な観点からも)、幾つかの問題が指摘できる。それを述べる前に、
すなわち、量的な、それも個人の状況を踏まえることなく、マクロな視点での食料の供給問題としてのみしか、捉えていない。
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