考えるイヌ〜桜井政成研究室〜

研究メモ、ゼミなどの教育活動、その他関心事など。

大学・NPOとの共同研究の難しさ(カナダ非営利・社会的経済学会その1)

Posted by Masanari Sakurai on   0 comments   0 trackback

研究メモ。5月28日〜30日までブロック大学(Brock University)で開かれていたカナダ非営利組織・社会的経済学会(ANSER: Association for Nonprofit and Social Economy Research)に参加してきた。興味深い議論が幾つかあった。

投稿を3回に分けて、私が関心を持った議題について、その議論の経緯と感想を取り上げておきたい。

ここではまず、第一のトピックについて紹介しておきたい。それは、研究者と実践家の間での、共同研究についての分科会である。

カナダは日本に比べてNPOの研究能力は高いと思うのだが、それでも、というか、やはり、というか、「研究」自体の取り扱い方が異なるし、重視されるポイントが異なるので、すれ違いも多く、難しいというのが正直なところのようだ。

報告者によれば、実践家が行う調査には次のような特徴がある、という。
実践家が調査を行う際には、次のような強み・弱みがある。

<強み>
・リアルタイム、あるいは最近の出来事を扱う。
・(調査結果に対し)即座に反応・適応する。
・理解できる言語による調査結果(カナダでは英語の他、フランス語も国の言語であるが、実際に理解できる人は少ないらしい。語種という意味以外にも、「分かりやすい言葉」という含意もあった気がする)。
・実践重視。

<弱み>
・しばしば方法論や分析が弱い。
・広く伝わらない。

実践家にとって、調査とは、将来的な事業展開に役立つものとして、すぐに結果がほしい。そして、抽象化された数量データではなく、わかりやすいものがよい。ケーススタディが一番役に立つ、という意見が出たのが象徴的だ。

しかし、アカデミックでは、調査の後に、それを精査して分析して論文にまとめるのには相当な時間と労力を要する。さらに学会誌に投稿してから査読のやりとりをしていると、掲載まで簡単に1〜2年は過ぎていく。理論枠組みも重要だし、分析のプロセスも(量的分析にせよ、質的分析にせよ)、きちんと記述することが求められる。しかし、それでは自分たちがそれに関わるメリットがない、というのが、実践家サイドの主張だ。

さらに、下の写真にあるように、実践家にとっては、アカデミックな論文を参照することは「ほとんどない」という。例外は、自分たちの団体が言及されていたり、調査に関わっている場合だ、とある。

写真 2014-05-29 14 48 35


それを乗り越える「戦略」が必要だろう、というのが議論の落としどころであったように思う。

ちなみに「研究者サイド」からは、トロント大を中心に、複数の大学・NPOが関わって行った反貧困実践調査プロジェクトであるAPCOL(A Detailed Description of the Anti-Poverty Community Organizing and Learning Project)を行ったピーター・ソーチャックの報告。

ピーターは、以前研究室を訪問して、話をしたことがある。その時に幾つか議論をしたことを書いておきたい。
・中小の市民団体とも、一緒にプロジェクトしたいが、余裕がないことが多い・学術研究はアウトプットまでのスパンが長いのが、地域に理解してもらえないことも。2年前の調査のことで再質問したら、「そんな前のこと、まだ結果出てないの?」と驚かれたり。
・同様に、「研究プロジェクト」が何のためのプロジェクトか、参加者に理解してもらうのが大変なことも。
・質的/量的な分析手法は、どちらもした方がいいんだけど、どちらかしかしない研究者が多い。

コミュニティの組織と組んで調査を行うことは、研究者サイドにとっても挑戦的なことである。しかし、それを乗り越えて、実践でも、学術でも意味のある研究を行う、というのは、チャレンジングだけれども、興味深い取り組みになる。繰り返しになるけれども、そこでどのような具体的な戦略をもって行うのかが、これから必要な議論なのだと思う。

スポンサーサイト

Post comment

管理者にだけ表示を許可する

Trackback

trackbackURL:http://sakunary.blog134.fc2.com/tb.php/199-0046fc88