考えるイヌ〜桜井政成研究室〜

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京都府中小企業のワークライフバランス推進に関する調査報告

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京都府中小企業のワークライフバランス推進に関する実態調査報告書



調査目的

 近年、仕事と家庭の両立が話題に上ることが多くなる中、中小企業でもワークライフバランス推進の重要性が高まって参りました。かつての日本の女性の在り方とは異なり、結婚しても自己実現の為に仕事を続けたい人や配偶者の稼ぎだけでは生活できない人など仕事と家庭を両立する理由は今や多種多様です。多様な価値観が存在する昨今だからこそ、行政の支援のみならず企業の子育て支援が求められております。

 さて、私たち桜井研究室ではこのような現状を受けて、ワークライフバランスの更なる発展を望み、現在ワークライフバランス推進の行動要因に関して研究を進めております。その中で京都府が府内の中小企業を対象に、ワークライフバランス推進の目的で行っている「京都モデル」子育て応援中小企業認証制度に注目しました。この「京都モデル」の宣言企業及び認証企業がどのような経緯で認証を受けるに至ったのか、また「京都モデル」に参加する意義などを調査し、中小企業のよりよい職場づくりや行政の施策に役立てたいと考えることを目的に、本調査を実施しました。

京都モデル子育て応援中小企業認証制度についてはこちらをご覧下さい。

調査対象・調査方法・実施期間

・ 全39問の設問により構成される質問紙法による郵送調査。
・ 調査対象:京都府において「京都モデル」に宣言・認証されている全316社の中小企業。(ワークライフバランスに関する部署担当者ないしは企業の代表者、あるいは全体の業務管理を行っている者への依頼)
・ 調査期間:2010年10月28日~11月12日の約2週間である

サンプル数
148社(回収率47%)

調査者
立命館大学政策科学部 3回生 宇根綾香 大倉しの 工藤皓平 砂塲聡美 森田陽子(以上、桜井ゼミナール所属)
准教授 桜井政成


※調査実施に際しては質問項目、調査先への広報等につきまして京都府府民生活部男女共同参画課から多大なるご協力とご助言を頂きました。
 この場を借りてお礼申し上げます。
 また、調査にご協力いただいた企業様におかれましても、お忙しい中誠にありがとうございました。






本調査結果の主要な点(サマリー)


「京都モデル」宣言に至る経緯として、京都府からの要請や、社会的にワークライフバランスの推進が必要とされてきていると感じていたからという回答が多かった。また、「子育て支援が必要な社員が実際にいて、制度化しないと業務に支障が出ることが予想されたため」も比較的多く、全体的にみて、社内外から何らかの具体的な要請や奨励があって取り組む企業が多い。

他企業(同業他社)のワークライフバランスに関する取り組みに影響を受けたため宣言に至ったと回答した企業は極端に少なく、他企業のワークライフバランスに関する取り組みを知らない企業が多いのではないかと予想される。

「京都モデル」導入後のメリットについて、「社会的イメージアップにつながった」・「従業員の勤労意欲が高まった」という企業が4割以上存在していた。「宣言・認証企業として会社をアピールできた」という企業も4割近く存在していた。この結果より、「京都モデル」に宣言・登録することは、京都府中小企業に上記のメリットをもたらすことが明らかとなった。しかし、まだその数値は50%をきっており高いとは言えずメリットを感じていない企業も半数存在する現状は否めない。その理由として考えられるのは、「京都モデル」の制度自体の認知度が低いことによるアピール価値の低さも考えられる。

育児休業制度、短時間勤務制度、フレックスタイム、子どもの看護休暇時間短縮型の労働形態については多くの回答企業で取り入れられている。しかし実際の利用実績があるかについては、その取組における全体の86%~60%と、制度によってばらつきがある。

事業所内託児施設の運営、子育て中の転勤免除、子育てサービス費用の援助、育児等で退職した者に対する優先的な再雇用制度、子育て中の在宅勤務制度については、導入している回答企業は少なかった。

ワークライフバランス支援に関して独自の取り組みを行っているところは、回答企業の3割近くである。具体的には、時差出勤制度や定時の帰宅推奨、事務職におけるノー残業や子供連れ出勤などである。





調査結果

1.調査対象企業の概要

【問1-1】企業・法人の業種

Q1-1.png

 調査対象の全企業のうちもっとも割合が多い業種は製造業(30%)であり、続いて教育・福祉28%、流通業が18%と回答している。この三業種で全体の4分の3以上を占めている。さらに、建設業の8%、金融・不動産業の5%、情報・通信業の3%、その他8%と続いている。全体の半数以上がサービス業である。

【問1-2】企業、または団体の創業・結成時期

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 おおよそ第二次世界大戦前(1950年以前)に創業された企業は33社あり、回答があった145社中の23%を占めている。1951~2000年創業の企業は95社(66%)、創業10年未満の企業は17社(12%)となっている。

【問1-3】年齢層

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 回答企業・法人における正社員の年齢層は、30歳代が42%でもっとも多く、その次に40歳代の22%、20歳代の17%、50歳代の12%、60歳代の6%、70歳代の1%と続いている。全企業の約半分が30歳代以下となっており、ライフステージにおける結婚・子育てのピークを迎える年齢層が多いことが分かる。

【問1-4】正社員数

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 調査対象企業における正社員数については、25人未満の企業が最も多く、全体の57%であった。それに続いて、26人~50人の20%であり、50人以下の企業が全体の4分の3以上を占めている。201人以上の企業はなかった。以上の結果より、正社員数が25人以下の企業が圧倒的に多いという結果となっていることが分かる。

 男女別に集計すると、男性正社員の場合は、1~25人が68%と比率は高くなっており、それに続いて、26~50人の16%、76~100人の6%、51~75人の5%、101~125人、151~175人の2%、126~150人の1%となっている。女性正社員は、1~25人が86%とこちらも比率が高くなっており、それに続いて、26~50人の10%、51~75人の2%、76~100人、101~125人の1%となっている。女性の正社員数が男性の正社員数よりも少ないことが分かる。

【問1-5】非正規社員数

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 各企業における非正規社員数 について述べる。非正規社員は、パート・アルバイト・契約社員・嘱託・期間工が含まれている。25人ごとに区切りを付けて単純集計をした結果、1~25人と答えた企業が最も多く、全体の74%であった。それに、26~50人の14%、51~75人の6%、76~100人の3%、126~150人、151~175人、176~200人が1%と続く結果となっている。

 男女別に集計すると、男性の非正規社員数は、1~25人が全体の89%と比率が高くなっている。女性の非正規社員数は、1~25人が全体の81%と最も高い割合となっている。男性の非正規社員数よりも女性の非正規社員数の方が圧倒的に多いということが分かる。


2.「京都モデル」子育て応援中小企業認証制度に関して

【問2-1】本制度に宣言、認証を受けるに至った理由

(1あてはまる・2ややあてはまる・3あまりあてはまらない・4あてはまらない、の4点リカート尺度。以下では、1と2の合計を「あてはまる」とし、3と4の合計を「あてはまらない」として分析している。)

a) 本制度に関する京都府からの紹介や要請があったため…あてはまる 101/ あてはまらない 42
b) 本社からワークライフバランス推進の要請があったため…あてはまる 32/ あてはまらない 109
c)専門家(社会保険労務士等)からの本制度の紹介や奨励があったため…あてはまる 45/ あてはまらない 96
d) 他企業(同業他社)のワークライフバランスに関する取り組みに影響を受けたため…あてはまる 14/ あてはまらない 126
e) 次世代育成支援対策推進法により、一般事業主行動計画の策定が推進されているため…あてはまる 50/ あてはまらない 90
f) 業界や専門職の中での研修でワークライフバランス推進について聞き、重要性を感じたため…あてはまる 56/ あてはまらない 86
g) 本制度に応募し認証されることによって、同業他社よりも競争優位になると考えたため…あてはまる 23/ あてはまらない 119
h) 子育て支援が必要な社員が実際にいて、制度化しないと業務に支障が出ることが予想されたため…あてはまる 69/ あてはまらない 73
i) 社会的に必要とされてきており、時代に乗り遅れないようにと考えたため…あてはまる 93/ あてはまらない 49

Q2-1.png

「京都モデル」子育て応援中小企業認証制度に関して、制度に宣言、認証を受けるに至った理由を尋ねた。グラフは、1あてはまる・2ややあてはまるを「あてはまる」として合計し、また3あまりあてはまらない・4あてはまらないを「あてはまらない」として合計したものである。

 その集計結果からわかる傾向としてまず、京都府からの要請が宣言・認証につながっている企業(a)が多い。また、社会的にワークライフバランスの推進が必要とされてきていると感じている企業(i)も多い。「あてはまる」が「あてはまらない」を上回った項目はこの二つだけである。なお「 h) 子育て支援が必要な社員が実際にいて、制度化しないと業務に支障が出ることが予想されたため」も比較的多くの企業が「あてはまる」と答えている。、全体的にみて、社内外から何らかの具体的な要請や奨励があって取り組む企業が多い。

 なお、「d」 他企業(同業他社)のワークライフバランスに関する取り組みに影響を受けたため」が「あてはまる」と回答した企業は極端に少なく、他企業のワークライフバランスに関する取り組みを知らない企業が多いのではないかと予想される。

業種ごとに得点の平均値を見てみる。製造業は、a)において2.23、i)において2.17、h)において2.73という数値が導き出された。外部から何らかの圧力を感じて取組始めたことが分かる。

 建設業は、f)において2、a)において2.2、c)とh)において2.33と小さい(よりあてはまる)数値であった。f)は、業界や専門職の中での研修会においてワークライフバランスについて聞いたというもので、c)は専門家からの奨励である。よって、建設業は規範的な圧力で取組始めた傾向が強いということが分かる。

 情報通信業は、a)、h)、i)が数値が小さい(よりあてはまる)。これは、全企業と同様の結果であるが、a)がより高く、京都府からの要請を受けている側面が強いということが分かる。

 流通業は、a)、h)、i)が数値が小さい(よりあてはまる)。これは、全企業と同様の結果となっている。

 金融・不動産業は、a)とh)とi)において小さい(よりあてはまる)数値が導き出された。全企業の傾向と同様であるが、i)の数値がより高くなっている。社会的に必要とされているという社会的なプレッシャーを強く受けているということが分かる。

 飲食等を含むサービス業は、a)、h)、i)が数値が小さい(よりあてはまる)。これは、全企業と同様の結果である。

 教育・福祉は、a)において1.78、f)において2.18、e)とi)において2.24という数値が導き出された。特にa)の数値が他業種と比べて非常に小さくなっているため、京都府からの要請を受けている側面が強いということが特徴的となっている。

【問2-2】本制度を宣言する又は認証を受けてのメリット

(1あてはまる・2ややあてはまる・3あまりあてはまらない・4あてはまらない、の4点リカート尺度。以下では、1と2の合計を「あてはまる」とし、3と4の合計を「あてはまらない」として分析している。)

a)宣言・認証企業として会社をアピールできた…あてはまる 51(34%)/ あてはまらない 91(66%)
b)採用活動において優秀な人材を確保できた…あてはまる 28(18%)/ あてはまらない 113(82%)
c)社会的イメージアップにつながった…あてはまる 58(41%)/ あてはまらない 83(59%)
d)従業員の勤労意欲が高まった…あてはまる 54(40%)/ あてはまらない 87(60%)

Q2-2.png

 本制度を宣言する又は認証を受けてのメリットを尋ねた。各質問項目に対して、「あてはまる」「ややあてはまる」と回答した企業の合計の割合として、a)の「宣言・認証企業として会社をアピールできた」が34%、b)の「採用活動において優秀な人材を確保できた」が18%、c)の「社会的イメージアップにつながった」が41%、d)の「 女性社員の勤労意欲が高まった」が40%であった。この結果より、「京都モデル」に宣言・登録することはメリットーとりわけ社会的イメージアップと従業員のモチベーションアップーをもたらすことが明らかとなった。しかし全ての質問項目において50%を切っており、質問項目にあるようなメリットを感じている企業、つまり制度への満足度が高い企業は多いとは言い難い結果であった。京都府の認証制度自体があまり知られていないのかもしれない。
 また、業種ごとにも満足度を分析したが、それほど特徴的な結果は得られなかった。


3.ワークライフバランスの取り組みについて

Q3-12.png

【問3】においては、ワークライフバランス推進策として実際に取り組んでいる取組み(問3-1)、および過去三年間に利用実績がある取組み((問3-2)を尋ねた。また自由解答欄にそれ以外の取組についても尋ねた。

 単純集計をした結果、実際に取り組んでいるもの、また利用実績のあるものとして共に数値が高かったのは、1)育児休業制度、2)短時間勤務制度、3)フレックスタイム、4)子どもの看護休暇の4つであった。この中でも、育児休暇制度は全企業のうち110社が導入しており、多くの企業が取り組んでいることが分かる。しかし、育児休暇制度は、制度があるものの利用実績としてある企業は79社と7割程度である。また、子どもの看護休暇においては、70社が導入しているが実際に利用しているのは42社と6割にとどまる。一方、フレックスタイム制度においては、導入している企業としては35社と比較的少ないが、実際に利用している企業は30社(86%)と、制度と利用実績の差が比較的少ない。短時間勤務制度は76%である。以上より、休業や休暇という名のつく制度は、実際には利用しにくい状況であるという傾向があり、短時間で働くなど、1日に働く時間を短縮できる制度は、利用実績が高い。これは、コスト面などを含め、代替できる人材の確保が難しい中小企業ならではの結果であると言える。

 残りの5)事業所内託児施設の運営、6)子育て中の転勤免除、7)子育てサービス費用の援助、8)育児等で退職した者に対する優先的な再雇用制度、9)子育て中の在宅勤務制度については全体的に導入している企業が少なくなっている。

 また、上記の制度以外に独自の制度を設けている企業もある。自由解答欄にその記入があった企業は全体の27%である。自由解答欄に記入があった内容では、定時の帰宅奨励、PTA等への積極的参加を誘導、男性の育児休業、従業員数の少なさから相互に助け合って休暇をとる、病院において院内24時間保育、所定時間労働内で働いた人への高評価、誕生日休暇、子連れ出勤可能、家族以外の身内に子育てをしてもらいその費用を会社が負担、65歳以上の雇用拡大、妊娠中の女性従業員への有給休暇、介護短日数勤務などがある。
 中小企業は、従業員数が少ない為、従業員個人に落とし込んで独自の制度を設けている点においても特徴がみられる。こういった中でも、短時間勤務制度などの時間短縮型の労働形態については多くの中小企業で取り入れられている。



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