考えるイヌ〜桜井政成研究室〜

研究メモ、ゼミなどの教育活動、その他関心事など。

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大阪 副都心推進本部による「フィランソロピーの促進、非営利セクターの活性化」について

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 大阪府と大阪市が共同で設置し進めている「副首都推進本部」で取りまとめた「副首都ビジョン~副首都・大阪に向けた中長期的な取組み方向~」の中で、副首都・大阪が果たすべき4つの役割の1つに、「『民都』として民の力を最大限に活かす都市を実現」を位置づけている。そこでは、フィランソロピーの促進により第2の動脈(フィランソロピー・キャピタル)を大阪に取り込み、非営利セクターの活性化を通じて、大阪が「フィランソロピーにおける国際的な拠点都市」を目指すとのことである。またそのために、行政や、多様な分野で活動する非営利セクターとそれらを支える中間支援組織、大学、企業等が対等の立場で様々なテーマについて議論する「(仮称)大阪フィランソロピー会議」を設置することとしている。なお現在はそれの設置に向けた検討として「(仮称)大阪フィランソロピー会議に向けた準備会」があり、この4月18日に第1回目の会議が開かれている。

<参考:大阪府ホームページ>
http://www.pref.osaka.lg.jp/renkeichosei/fukusyutosuishin/fukushutovision7.html



 もともと大阪は町人・商人の街であり、江戸の八百八町に対して称された大阪の「八百八橋」は、そのほとんどが町人の寄付で掛けられたという。今でもその「民間の力」に自負を持つ人は多い。筆者は、所属する大学のキャンパスが3年前に大阪に開設され、新たに大阪に通勤するようになった。大学自体が地域開放をコンセプトとしていることもあるが、そもそもNPOやボランティア活動、地域活動を研究対象とすることから、短い期間ながら、大阪での「市民の力」に触れる機会が多い。 

 筆者が滞在したカナダでは、今回想定されるような、多様な主体での地域問題解決=コレクティブ・インパクトを主導していたのはNPOであった。NPOがリサーチャーを雇用して調査し、政策提言して予算を確保し、ファンドレイジングを活発に行って寄付を集め、そして他NPOや行政・企業とネットワークを構築し問題解決のためのプロジェクトを実施していた。今回、そうした提案が行政主導で出ることは、NPOの力が日本では充分でないことの証左でもあるが、日本の状況からして望ましいことでもある。

 多くの府外の人が想像する<大阪>のイメージはお笑いの文化であり、道頓堀の食い倒れのイメージかも知れない。しかし大阪は、府内はもとより、大阪市内においても、街の文化が大きく異なっている。例えば、筆者が通勤する北摂地域はいわゆるベッドタウンである。住みやすいイメージに惹かれ若い人口は一定保たれつつが、そうした地域だけに地域コミュニティとの関わりが薄い人も多い。しかし、最近全国的に拡がりつつある「こども食堂」(子供達に無料や低価格で食事を提供。貧困世帯支援、居場所づくり、食育等の目的を持つ)は、当地でも様々な人によって盛んに開催されている。また北摂には農山村地域も存在するが、そこでは若い新規農業者や移住者達が活性化に向けた取り組みを積極的に行っている。

 大阪市内に目を向けた時、もっとも課題が集積しているであろう地域が、西成区のいわゆる釜ヶ崎地域である。同地域は日雇い労働者の街として有名だったが、現在は生活保護受給者が多い「福祉の街」となっている。これは、バブル崩壊後に製造業の景気悪化と労働者の高齢化によって、失業が常態的となったことによる。またそれ以外にも複合的に問題を抱えている地域でもある。しかし先日、筆者がこの地域での勉強会に参加した時に見聞きしたのは、NPO等の支援者と、地域で商売をしてきた「地の人」たちとが一緒になって、この地域の将来像を展望している姿であった。こうした動きは、大阪市が「西成特区構想」を打ち出す前からだという。一筋縄ではいかないが、市民主導で地域問題解決を図ろうという気概が見られる。

 このように、大阪には「民都」と呼べる伝統と、地域地域での萌芽は見られる。では、どうすれば、「フィランソロピーにおける国際的な拠点都市」に成り得るのか。第一には社会変革を実現するための、官民による積極的な投資だ。社会的に望ましい取り組みを行っている企業に投資する(あるいは望ましくない企業を排除する)社会的責任投資(SGI)は、欧米では長い歴史を持って社会に浸透しているが、日本ではまだ充分ではない。カナダでは非営利セクターが公的機関や地域の大規模事業に対して、資材やサービスの調達を、社会的ミッションを持った団体(社会的企業)との契約で賄う「社会的調達」をするべきというキャンペーンを行っている。こうした考え方もまだ日本では薄い。さらに、研究予算も地域の課題解決には重要な役割を果たすことができる。例えば地域のNPOに大学も協力した場合、コミュニティベースのアクションリサーチによる、地域の問題解決手法の開発を進めることも可能だろう。

 第二に、社会変革を実現するためのインフラの整備だ。大阪で提案されている「(仮称)大阪フィランソロピー会議」が、そもそも、多様な主体によるネットワークの場として有効に機能すれば、それ自体が重要なインフラと成り得る。その際に先述の「コレクティブ・インパクト」の発想は重要だろう。これは多様な主体のパートナーシップによる地域問題解決のことを指す。重要なことはそれぞれがビジョンを共有して、各自の「強み」を活かし、継続的に行うこととされる。さらにその際には、活動全体をサポートする専任のチームがあるべきとされる。その役割を担う組織が編成されることが必要だろう。また物理的な「場」の整備としては、カナダ・トロントの貧困地域であったリーゼントパーク内の「センター・フォー・ソーシャル・イノベーション」が参考となる。ここは複合施設のワンフロアーを使い、社会起業家が低予算でオフィスを設け、また様々に支援が受けられるコ・ワーキングスペースを整備している。現在リーゼントパークは大規模な再開発が進行中であるが、このセンターで地域住民向けにもイベントをするなど、地域課題に向けた地域内外の関係者の交流が図られたりしている。こうした例は、日本でも大いに参考にできる。

 最後に、こうした多様な主体の関係性を強めることは、将来の危機への対応力(レジリエンス)も高めると期待される。大阪府では「30年以内の発生確率が60~70%」ともされている南海トラフ地震での死者が、13万人に上る可能性が示唆されている。そうした災害への備え、および、回復においては、様々な主体の協働が欠かせないだろう。
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