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桜井政成研究室

研究メモ、ゼミなどの教育活動、その他関心事など。

2018年度卒業文集の巻頭言

Posted by Masanari Sakurai on   0 comments   0 trackback

 卒論執筆お疲れさまでした。今年のメンバーは個性的でしたので、指導をしていて楽しい反面、全く異なる研究テーマに次々にアドバイスをせねばならず、大変な一面もありました。いずれにしても政策科学部では卒論が必修化され、一年目であったのが皆さんの代でした。また、提出時期が早まったこともあって、指導のペースが充分につかめない(あるいは皆さんからしたら、執筆ペースがつかめない)ということもありました。最後の最後まで、私から「果てない」要求を論文に突きつけられ、皆さんも苦労したことかと思います。
 しばらくは卒論を「見たくもない」とは思いますが、一息ついたらぜひ見直してみてください。ああすればよかった、こうすればよかった、と反省点が見つかるかも知れませんし、あるいはその時の気持ちを思い出す大学時代の思い出の一側面になっているかも知れません。私が一番、見直してほしいのは、皆さんの論文の「到達点」です。指導の時に、一番うるさくお伝えしてきた「自分の論文で明らかにしたことは何か」が、結局は何だったか、自分自身理解できたかどうかです。
 本当は、指導の途中でそれを見つけることが、理想でした。その意味で研究の指導とは、執筆者(=皆さん)と指導者(私)とが、共に新たな科学的価値を創り出す創造的なプロセスであるべきなのです。ひょっとしたら皆さんの中にもそんな幸運(セレンディピティ)に巡り会えた人がいたかも知れません。「発見」されたものは何なのか。それは、自分が研究してきたことの意味はどこにあったのかが、改めて明らかになる瞬間でもあります。
 ある学生が、指導の途中で、「うおー!(自分の研究の結論までが)つながったー!気持ちいいー!!」と叫んだことがありました。その姿はまるで、古代ギリシャ時代に、お風呂の中で浮力の原理を発見したアルキメデスが、「エウレカ(分かったぞー)!」と叫んで飛び出し、街を裸で走り廻った、という逸話を彷彿とさせるものでした。
 しかし言い換えれば、その「快感」を得ることが研究の醍醐味であり、さらには皆さんが大学で学ぶ、その集大成たり得るものなのです。そうした「快感」を皆さんと共有することが目標、ということをもっと早い段階にお伝えできていればよかったというのが、私の反省です。卒論を書くのは苦しいだけじゃないよ。そのトンネルの先には甘美なお花畑があるのだよ、と。
 また同時に、卒論執筆、そして指導のプロセスというのは、自分と社会とが「つながる」その結節点はどこにあるのかを探る、一つの航路であったとも言えます。2万字という、当初はとてつもないと思っていた文字数の文章の中に、それが表現されたものです。冒頭で少し触れた、「大学生時代の思い出」とは、そういう意味において、バイトやサークルとは違ったかたちで、自分、そして社会と、真剣に向き合った跡がそこには残されている、と言えるでしょう。
 ですから、ぜひ、折に触れて、見返してみてください。また、大学生時代にお世話になった方々にも見せてください。恥ずかしいでしょうが。でもその「恥ずかしさ」は、お世話になった方々にとっての、理解したい、皆さんの「学生時代」でもあるのです。ご恩返しだと思って、お見せ下さいね。

ひときわ寒い年の 雪のちらつく 京都の寓居より
桜井政成

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