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桜井政成研究室

研究メモ、ゼミなどの教育活動、その他関心事など。

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Posted by Masanari Sakurai on

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五輪ボランティアはレガシーを残せるか(NHK「日曜討論」出演記録)

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NHK「日曜討論」に出演してまいりました。討論、というよりは、当日は控え室から他の参加者の方とわいわい楽しく話していたので、そのノリで本番も皆で気楽に話したという感じで、楽しく終わることができました。

とはいえテーマ的には、災害、五輪に際してのボランティア活動という、タイムリーに話題になっていることであったので、好きなことを話すというよりも、私自身は、これまでの研究で明らかになっていることから言えるのは、どのようなことかを、無責任にならずにお伝えできればと思っておりました。

本番では十分にお伝えできなかったことを少しこちらで補足しておければと思います。以降、事前に番組からいただいていた質問に答える形です。

■日本のボランティアの数・種類・質について

・平成26年度(2014)社会生活基本調査によればボランティアをしている人の率は1986年の調査から30年、ほとんど変わっていません。毎回、男性は24%から27%の間を、女性はだいたい25%から30%の間を推移してきています。これは、国際的にはそんなに低くない数値である。別のデータですが、日本は25.6%で、OECD諸国では平均程度となっています(2009年の調査)。ただし、日本は、寄付の参加者割合は低いです。

・同調査によれば、最も多い活動形態は「まちづくりの活動」。この「まちづくり」の活動例としては、調査票では道路や公園等の清掃、花いっぱい運動、まちおこしなどとなっており、町内会・自治会といった地域団体の活動が含まれていると考えられます。男女別に見ると、女性は子供対象、高齢者対象、障害者対象といった、対人援助サービスに携わっている割合が比較的高く、他方、男性は防犯・防災の活動やスポーツ・文化といった、まちづくりの延長上にある取り組みに参加している傾向にあると言えます。

・また平成23年社会生活基本調査で男女別にもっとも高い割合の参加形態であったのは、「地域社会とのつながりが強い町内会などの組織」となっている(男性11.1%、女性11.6%)。他方で個人で活動している者も、その次に高くなっている(男性8.0%、女性10.1%)。地域に密着して活動する人と、個人主義的に活動する人の2種類がボランティアの質としては多い、と言えるでしょう。ただし、災害ボランティアに参加する人たちは個人で活動する人たちが多い、という傾向があります。

■ボランティア参加の妨げになっているものは?

・アメリカの先行研究(Sundeen et al., 2007)で、ボランティア参加の妨げとして、「時間がない」と答える人と、「機会がない」と答えがちない人がいる、という結果があります(これは実は社会階層による違いなのですが、その点は番組内では言及を控えました。なおボランティアの階層による二重性は、日本でも議論があります)。いい換えれば人々の間では、社会貢献には関心があって自分のコストを掛けても価値がある活動ならば参加したい、と思う人々と、そもそも関心がない人々がいます。前者の人々にはシリアスレジャーの考え方が有効だと思います。シリアスレジャーとはボランティアの理論の一つで、真面目な余暇活動という考え方です(Stebbins, 1996)。すなわち、自分の持つ(専門的な)知識や技術を生かし、楽しく社会貢献する活動があれば、参加する人たちだと思います。後者の人たちには、自分達に身近なこと、助け合い的なことであれば、関心が持てるということがあるということになると思います。

■ボランティアにとって東京五輪・パラリンピックはどんな機会・きっかけでしょうか?

・大災害のボランティアと、五輪ボランティアの共通点は、いずれもメガイベントであり、地域での日常的なボランティア活動とは一線を画し、極めて特殊な活動であるということです。先行研究では(日本の)大規模災害でのボランティアは、一般のボランティア活動の平均よりも、より個人や、地域コミュニティとは関係ない団体で活動する傾向が見られます。五輪ボランティアも地域のスポーツボランティアとは異なる参加動機を持つことが分かっていて、それはより個人主義、利己主義的な動機を持つとされています(Kim et al., 2010)。

・個人主義的ということは、参加の意思や動向がきわめて流動的ということにもなります。被災地はマスコミの影響でボランティアが来過ぎたり、全く来なくなったりします。五輪も、例えば2016年リオ五輪では、7万人の登録と面接・訓練をコストかけて行いましたが、会場には7〜8割しか現れず、一部のボランティアに過度な負担が行ったのが問題視されたりしました。

・東京五輪が募集している11万人というボランティアは、五輪史上も最大規模ですし、国内的にもそうしたスポーツ大会のボランティアマネジメントの経験はないでしょう。また、先述のように、五輪ボランティアはこれまでの研究から、地域のスポーツイベントのボランティアとは全く異なる動機を持っていることがわかっています。これは、地域のスポーツイベントのボランティアマネジメントとは異なる点があるということです。ですから、本当にそんなに人数が必要なのか、ボランティアに依拠しても大丈夫なのかも含めて、周到な準備が組織委員会には求められると思います。

・後述するように、東京五輪がボランティアにとって満足できる機会になるかどうかは、レガシーが残せるかどうかに関わってきます。どのようなことがボランティアの満足となるかは、後述のロンドン五輪のボランティアを対象とした研究では、活動前の受け入れ態勢、活動中の業務、そして様々な人からの感謝といったことが挙げられています。それ以外にも、ボランティア活動の満足の研究では一般的に、マネジメントの要因が強いとされています。組織委員会の役割は大きいと言えます。

■五輪・パラ後も根づかせるために何を行っていくべきでしょうか?

・東京五輪のあと、ボランティアのレガシー(遺産)をどう残すかということについては、大会組織委員会から「東京 2020 大会に向けたボランティア戦略」が出されています。そこでは大会後、「様々な活動への参加に繋げていくことで、ボランティア文化の定着と、一人ひとりが互いに支え合う「共助社会」実現」を目指すとしています。しかし、それはどのようにすれば実現できるのかという「戦略」は、必ずしも明確には書かれてありません。

・私はロンドン五輪のボランティア研究が参考になると思います。ある調査結果(Alexander et al., 2015)によれば、活動後に、ボランティア活動をしていきたいと答えた人々は、活動に高い満足を得た人々でした。また、義務的に参加した人たちは満足度も低く、その後のボランティア活動への意向も低いものでした。このことから、東京五輪ではできるだけ動員型で義務的なボランティアを集めるよりも、活動に魅力を感じる形で集める必要がありますし、また活動の中で満足を得られるようにボランティアをサポートすることが、よいレガシーを残していくためにはきわめて重要でしょう。

・また、「五輪ボランティア」で特徴的なのは一定のリピーターがいることです(Fairley et al., 2007)。東京五輪のボランティアにも前の五輪ボランティア参加者が一定含まれるでしょうし、今後も東京五輪でボランティアしたものが次の大会を支える部分はあるかと思います。それも今回の大会の一つの「レガシー」になるでしょう。

・日本社会全体では、これまでの共同体的なボランティア活動の良いところを引き継ぎつつ、個人主義化した社会の中でのボランティアのあり方が問われていると思います。


参考文献

Alexander, A., Kim, S.B. and Kim, D.Y. (2015), “Segmenting volunteers by motivation in the 2012 London Olympic Games”, Tourism Management, Pergamon, Vol. 47, pp. 1–10.
Fairley, S., Kellett, P. and Green, B.C. (2007), “Volunteering Abroad: Motives for Travel to Volunteer at the Athens Olympic Games”, Journal of Sport Management, Vol. 21 No. 1, pp. 41–57.
Kim, M., Zhang, J.J. and Connaughton, D.P. (2010), “Comparison of volunteer motivations in different youth sport organizations”, European Sport Management Quarterly, Taylor & Francis Group, Vol. 10 No. 3, pp. 343–365.
Stebbins, R.A. (1996), “Volunteering: A serious leisure perspective”, Nonprofit and Voluntary Sector Quarterly, 30 June.
Sundeen, R.A., Raskoff, S.A. and Garcia, M.C. (2007), “Differences in perceived barriers to volunteering to formal organizations: Lack of time versus lack of interest”, Nonprofit Management and Leadership, Vol. 17 No. 3, pp. 279–300.

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