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桜井政成研究室

研究メモ、ゼミなどの教育活動、その他関心事など。

平成という時代とボランティア

Posted by Masanari Sakurai on   0 comments   0 trackback

平成が終わるということで、マスコミでも特集番組・記事が組まれていますね。私のところにもちらほら、ボランティアに関する取材があったりします。1995年の阪神・淡路大震災は被災地でのボランティアの活躍が社会的に注目されたことから、「ボランティア元年」と呼ばれました。しかし私はこうした見方に少し疑問を持っております。というのも、『社会生活基本調査』からは明確な根拠が見られないからです。

※『社会生活基本調査』(平成28年版)においては「ボランティア活動」とは、次のように定義されています。「報酬を目的としないで自分の労力、技術、時間を提供して地域社会や個人・団体の福祉増進のために行う活動をいう」。また、「活動のための交通費など実費程度の金額の支払いを受けても報酬とみなさず、その活動はボランティア活動に含む」とされています。ただし、ボランティア団体が開催する催し物などへの単なる参加は除きます。

またしっかりとデータを提示したいと思いますが、『社会生活基本調査』の結果として公表されている部分の数字を少し分析してみています。『社会生活基本調査』は5年ごとに総務省によって行われています。阪神淡路後の直近に行われた1996年調査結果によれば、ボランティア参加者率は全国で上がったりはしておらず、またその後の調査結果でも横ばい状態が続いています。阪神・淡路を契機にボランティアが盛んになった、というマクロな状況は観察されませんでした。

また同調査より、阪神淡路の時には若者がボランティアとして大活躍したとされていますが、その時期に20台前半だった世代は、その時もその後も、ボランティア参加者率は他の世代に比べ、平均よりも低めです。これは私は「失われた20年」の影響があるのではと考えています。ロスジェネ世代は社会参加機会もロスしているのではないか、という危惧に近い見立てです。

例えば30〜40代は例年、同調査では、参加しているボランティア活動の種類としては子供関係が多い結果になっています。ところがロスジェネ世代は未婚少子化の世代でもあり、そうした絆がつくれない人も多いのではないでしょうか。また、同じく調査結果からは、40代以降は地域団体で「まちづくり」に関わる活動に携わる人が多くなりますが、これもロスジェネ世代が単独世帯だと、町内会自治会の集まりやお祭りなどに顔出すこともほとんどないでしょう。

地域参加、社会参加の機会の損失は、絆の損失でもあります。これまでの他の世代では多くの人が得られたはずの絆が(ある程度、強制的で嫌嫌ながらのところもあったでしょうが)、ロスジェネ世代では非常に不安定なものとなっている可能性があるのです。また、単にロスジェネ世代が社会参加機会を喪失しているだけでなく、それによるコミュニティ活動の低調化も各地で起きているはずです(40〜50代がまちづくりのボランティアの中心的な世代なので)。

他方で、20代後半〜30代前半の若者はボランティア参加率が各世代平均より高いです。やはり景気が良いためでしょうか?この世代の動向は期待が持てるのですが、ただしこの世代は地域団体等に参加せず、「個人」で活動する人が多いです。しかしこれをとらまえて、「これからは個人の自由意志でボランティアをする時代になったのだ!」と叫ぶのは性急でして、実はこれまでも、どの時代も、20代後半〜30代前半の年齢層は個人でボランティアをする傾向にあったのです。

結局、「ボランティア元年」とはなんだったのか。平成がボランティアの時代であったかどうか。については、災害ボランティアに限ってはそう呼べる、ということなのかもしれません。ただし災害ボランティアについても、かなり限られた人々、それも、高い階層(収入や学歴が高い)人々によるものではないか、というのを、同じく『平成28年社会生活基本調査』のデータを使って、私は論文にまとめていたりもします。

http://research-db.ritsumei.ac.jp/Profiles/26/0002557/theses1.html
ネット上にデータを載せたいのですが、まだ大学で載せてくれていないのですよね…

なお『社会生活基本調査(平成28年版)』によるボランティアの現在的状況については、下記の本の「第7章 ボランティアと寄付―市民社会を支える資源―」にも少しまとめてあるので、ご参照ください。





しかし、地域コミュニティ組織のあり方も、変わっていかざるを得ないでしょうね。いつまでも町内会・自治会が持ち家一軒家に住む子供のいる世帯を対象とした組織では、そこから漏れる人も出てくるでしょう。(すでに各地の町内会・自治会の活動内容に、疑義が呈されていたりしますね。下記の本など参照。)



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