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桜井政成研究室

研究メモ、ゼミなどの教育活動、その他関心事など。

障害者の「害」の字をひらがなにする意味はあるの?

Posted by Masanari Sakurai on   0 comments   0 trackback

以下、NHKでは「障害者」の「害」の字をひらがな表記になぜしないのか、という話。少し古い、2016年の記事ですが、なぜか最近ネットで話題になっていました。東京パラリンピック開催が近づいているからかな。

NHKが「障がい者」ではなく「障害者」を使いつづける理由 | ananニュース - マガジンハウス



実はこの話は以前から、私の授業の中でも学生から質問でよく出てたりします。障害の害の字を、ひらがなにしたり、「碍」の字にすることについてはどんな意味があるか?と。このことについて、実際に調査をした興味深い研究があります。一つは意味がある、とする研究(以下の、ひとつめ)と、実際に障害者との接触経験がない健常者には意味がない、とする研究(以下の二つめ)です。

文皓琳. "言葉としての 「障害者」 に関する比較研究: 日本と韓国における使用状況と認識の差." デザイン学研究 55.2 (2008): 55-64.




栗田季佳・楠見孝 "「障がい者」 表記が身体障害者に対する態度に及ぼす効果." 教育心理学研究 58.2 (2010): 129-139.



二つ目の論文では、具体的には障害者と接触がある者にとっては、「尊敬」に関わるポジティブなイメージを促進させるとのこと。ただ結局のところどうなのかは、検討されている学術論文が少ないので(私が見つけられてないだけかもしれませんが)断言するのは難しいかもしれません。

NHKでは明確な理由で「害」を使い続けているが、それは、「障害」はその人自身ではなく、社会の側にある。障害者=社会にある障害と向き合っている人たち、と捉えているから、とのこと。結局のところ文字からのイメージは、そうしたメッセージとの関係で理解されるべきだと思うので、こうしたNHKのメッセージが広く伝わると良いですね。

ちなみに、関連した話として、「障害」を個性と捉えるべきだ、という感想も私の授業では学生からたまに出るのですが、これについては以下の二つの論文が、なかなか興味深い結果を示しています。(学生にも紹介しました。)

土田耕司. "障害個性論の背景:「障害は個性である」 という言葉の役割." 川崎医療短期大学紀要 35 (2015): 51-55.



李相済・廣橋容子 "障害観についての一考察." 国際研究論叢: 大阪国際大学紀要 23.3 (2010): 107-117.




内容を簡単に要約すると、「どういう社会的な文脈で、誰が誰に言うかによって、全然意味が変わるよね」という話。障害者が社会に対して差別を訴えて言うのか。障害者が自分の障害のことを語るのに言うのか、それとも政策担当者が何らかの政策的意図を持って(具体的でなくても、そう読めるかたちで)言うのかによって、全然意味が変わってきます。

例えば、「吃音(どもり)も個性だよね」と、苦労を知らずに他人が言うことを、当事者がどう思うか。また逆に当事者が苦労を踏まえて他の人に言うのでは、意味が違いますよね。また政策担当者が政策的意図を持って、というのは、例えば「障害は個性」という発言や文書記載が、「だから公的補助必要ないよね」というように読み取れる可能性もあり、少し注意が必要だということです。

ということで、「障害は個性」論は、ちょっと、気をつけなければならないのではないかと思います。安易に楽観的に使える言葉ではないですね。
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