考えるイヌ〜桜井政成研究室〜

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体育会系は就職に有利か?

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おもしろい論文を見つけました。

「体育会系の能力」松繁寿和

体育会系の学生が就職に有利だ、という言説は一般的に広く流布されています。
しかし結論から言えば、体育会系が就職で有利かどうかは、学術的には結局よくわかってないらしいです。
(このときに「よい就職」をどのように定義するかは概念の操作化の仕方によって、様々かと思います。例えば学生が希望する職に就けたかどうか、初任給のより高い職についているかなどが想定されます。ただしこれはいままでの研究が充分ではないので、どの操作化が適切であるかは、はっきりとは言えない現状にあることをご注意下さい)

「一概に言えない」というのが先行研究における結論(群)であるという論拠としては、以下もご参考下さい。
「理想の人材像と若者の現実」岩脇千裕

よくわかりませんでした。ではつまらないので、勝手にもう少し考えてみたい。もし仮に体育会系が有利だとすると、次の二つの仮説が成り立つのではないでしょうか?

proposition1:
体育会系の学生はその他の学生に比べて、就職に有利な人脈(social capital)を持っている。

proposition2:
体育会系の学生はその他の学生に比べて、就職に有利な能力(human capital)を持っている(と思われている)。

第一の仮説について。日本では新卒採用制度があるので、欧米に比べたらソーシャルキャピタルはあまり利いていない気がする。実際、先行研究でもその証拠は見つかっていない。
それでも体育会系のOB・OGネットワークは強固なイメージ。
最近は、きわめて非効率なネットを使ったマッチング・システムに辟易した企業が、リクルーター制度を復活させつつあるそうです。なので、ひょっとしたらこれから有利に働く要因になるかも知れません。

浅野智彦氏の報告によれば、友人関係を重視する学生ほど、就職への意識が強いという。「大学生の場合、友人関係を重視することは狭い親密圏に閉じこもることを必ずしも意味しておらず、むしろ移行過程にとって有利なネットワークを維持・拡張することを含んでいるのかもしれない。」(同3頁)

残るもう一方の能力仮説は、どうなのでしょう。
体育会の学生は返事が良くて従順なので、企業側は飼い慣らせそうなイメージを持ち、採用しがちなのかもしれません。

前述の論文では、就職における企業側と学生側の、求める/求められる能力の認識ギャップが明らかにされています。
ひょっとしたら就職においてはそのマッチングが重要なのかもしれません。
だとすれば、学生が企業にアピールするのは「従順さ」であっても何ら不思議ではありません。リクルートスーツが好例です。
体育会系出身の学生(特にチーム・スポーツ出身)は、その辺の組織の世知辛さをよく理解している分、より上手に(身体的な非言語的サインも含め)アピールできるのではないでしょうか。

体育会系(特にチーム・スポーツ中心)出身者のことを考えたときに、実際これまでの組織への帰属経験が長い分、そうした「組織の違和感」に鈍感になってしまっている可能性も高いのではないでしょうか。

しかし、体力に自信のある分、無理をして過労死なんていうことも、あってほしくありませんね。

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