考えるイヌ〜桜井政成研究室〜

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報告:社会価値評価研究セミナーin京都 「NPO・社会的企業等の社会的価値評価への挑戦~英国版SROI入門」

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イベント報告。
以下、企画主旨について、主催者の明治大学非営利・公共経営研究所のホームページからの転載です。

近年、NPO・社会的企業等、「サード・セクター」の社会的インパクトをどのようにしてより積極的に表現することができるのか、あるいは、定量的に評価することができるのか、といった「社会的価値への見える化」に関心が高まっています。特に、欧米では、SROI(Social Return On Investment、社会的投資収益)をはじめ、新たな評価手法が実用化されてきました。英国では、非営利系シンクタンクのNEF(New Enonomics Foundation)が、米国のREDFで開発されたSROIを進展させ、2009年、内閣府から「SROIのガイドブック」を公表し、一部のNPOや自治体での導入が進められています。

 この度、この分野の議論と実践をリードしてきたジェレミー・ニコルス氏を招聘し、SROIを用いた社会的インパクト測定の入門的解説と、具体的にSROIという手法が直面している課題等についてお話いただきます。ご関心がありましたら是非ご参加ください。

※"Guide to SROI"は、以下のサイトからダウンロードできます。
http://www.thesroinetwork.org/component/option,com_docman/task,cat_view/gid,29/Itemid,38/
(英語ですが、現在(11/1/26)、とあるグループが翻訳作業を進めているとのことです。)

ということで、私も研究室名で、共催、ということになっていましたがあまりお役には立てず。せいぜいツイッターで宣伝したぐらいです。(おまけに遅刻&英語あまりわからず…かっこつけて同時通訳聞いてなかったので。)

当日はありがたくも、50名近くの方にお集まりいただきました。東京や神戸などからもお越し頂いていたようです。

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(講師のニコルズ先生です)
SROI(Social Return On Investment、社会的投資収益)は簡単に言ってしまえば(講演タイトルにもあるように)、NPO・社会的企業が創出する価値を算出しようという試み。それによって、投資者(investers; ただしここでは、NPO・社会的企業に何らかの資源を投資しようとする者ということで、寄付者やボランティアも含むとのことでした)へのリターンを「見える化」するというもの。

例えば高級ブランドの靴であれば、人びとは原価以上の、ブランドという「価値」を買う。
では社会的企業の場合は?
それは「変化」(change)だ。というニコルズ氏。
対象者がどのように変わったのか。それは当事者にとってどのような意味があるのか。ポジティブな変化だけでなくネガティブな変化にも目を配りつつ、それを測る。
誰が変化したのか。どう変化したのか。重要な変化は何か。それによって社会的価値はどう変化したのか。

この時に大事なのは、ステイクホルダー(そのNPO・社会的企業の関係者)を巻き込むということ。
つまりたとえば、評価軸の設定についても、彼らが何を望むのか、どんな変化が明らかになればさらに「投資」するのかに注意しなければならない。そしてそれを金額に換算し、投資額に対するリターンとして見せるのだ。

これは言い換えれば、アウトカム(成果)を指標化し、さらに計上するために使用可能な代理変数を求めるということだ。例えば生涯のある若者の社会的な孤立の解消がそのプログラムの成果のひとつであったとするならば、友人との社会的接触の頻度が指標になり、それを価値として計上するために、社会的活動に参加する費用や、所得のうちの娯楽費の割合などを使って算出する。あるいは地方自治体におけるリサイクル活動の場合、それを指標化して埋め立てられる廃棄物の量とし、そのデータを収集し、さらに埋め立てにかかる費用を算出して価値を計上する。

まとめると、この価値会計報告の原則は次の通り。
1.ステイクホルダーを巻き込む
2.何が変化するのかを理解する
3.重要な事象を理解する
4.重要な事象だけを考慮に入れる
5.過剰な主張をしない
6.透明性の確保
7.結果の検証


ということでニコルズ氏のレクチャーは終わり。実にさわりの部分だけだったので、質疑応答ではみなさん「?」だったと思われ、活発なやりとりとなりました。

コメンテーターの服部先生(CAC社会起業家研究ネットワーク代表)からは、価値を評価するために数値化することで本当に理解できるのか。数値化して良いのか、という現場の声があることを紹介。これに対してニコルズ氏は要はusefulかどうかだ(使い勝手がよいか)という返答でした。なるほど。

またこの手法は英国でもそれほど普及していないという話もでました。理由はデータ収集が現場の組織にとっては大変なこと。また、それがどう役に立つのか分からないため。
確かにその辺では、何らかの外部者(コンサルなど)が手伝わないと難しく、ある程度の規模のある組織しか導入できないかも知れない、と服部先生がおっしゃってました。

以下、私が考えたりコメントしたことですが、興味深いのは、「変化」の価値は、現場で活動しているNPO・社会的企業の人達はいつでも目の当たりにしていると言うことです。
こどもの学習支援をしている団体のボランティアの学生が、「この一年でこどもが驚くほど変わった。だからこの活動には意味がある/だから私はボランティアを続けたい」と話していたことがあります。
要はそれが、見えているけど、測れていない、ということだと思います。もちろんそうしたエピソードを語るという質的なアプローチでも充分共感を得られるでしょう。しかしSROIのような手法を用いて数値化をすることによって、鬼に金棒、より洗練された「見える化」がなされるのではないでしょうか。

また、単純な「数値化」は危険でありそのためにSROIがいくつかのポイントを抑えていることも有用性が高いと感心しました。
例えば、障害者作業所と学生とで授産製品販売促進の共同プロジェクトを考えていたときです。
こちらはいかに効率的に効果的に販売するかを考えていたのですが、作業所の側としては、いやそうじゃないんだ。販売のチャネルが増えたり学生と関わることによって、当事者の社会参加の場、就業経験の場が増えることが重要なんだとお話しされました。まさにステイクホルダーありきで、事業成果を評価する必要があるわけです。

あるいは、単純に「コスト・ベネフィット」「コスト・エフィシェンシー」を評価してしまうと、利用者のえり好み(スキミング)を行ってしまう恐れがあります。例えば若者の就労支援を地方自治体などが評価する際に、正社員として雇用された人数を(単一な)評価軸として設定してしまうと、その事業を行うNPOや社会的企業は、より就職しやすい若者を優先的に利用者として集め、就職がしにくい、例えば精神障害を抱えた若者などはあまり扱わなくなる可能性がある訳です。

こうした問題からも、評価軸・測定指標の設定は非常に難しく、またその収集には手間がかかります。
この困難性をどう克服したらよいのでしょうか。
ひとつは似たような事業を行っている団体同士、あるいは同じファンドを利用している団体同士が集まって、共同で指標を作成するというアイデアがあるかと思います。
つまり、あるファンドを利用するNPOや社会的企業は、この指標を用いてこの様にデータを収集し、成果報告をしなさいと定式化・マニュアル化してしまうのです。

ということで、まだまだ日本での実用化には課題が多いですが、非常に興味深い取組であると認識しました。
当日ご参加いただいた皆様、どうもありがとうございました。

~~~~~
以下、さらに詳しい情報を求めている方へ
こちらのサイトをご覧下さい。(英語ですが)
www.social evaluator.eu
www.valuegame.org
www.thesroinetwork.org
www.sroiproject.uk

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