考えるイヌ〜桜井政成研究室〜

研究メモ、ゼミなどの教育活動、その他関心事など。

タイガーマスク現象(匿名での児童施設への寄付)は日本的なのか?

Posted by sakunary on   0 comments   0 trackback

日本も捨てたもんじゃないな、と思わせる、年始からの「タイガーマスク現象」。



「全国の児童施設などに、漫画タイガーマスクの主人公「伊達直人」を名乗る人物からの贈り物が相次いでいる。」
ヤフージャパンニュース
※関連情報→http://dailynews.yahoo.co.jp/fc%2Fdomestic%2Fdate_naoto%2F#backToPagetop



政治家の勉強会も行われ、児童養護施設への支援拡充を政府に訴えていくという動きに発展したそうです。
児童福祉が充実するのはとてもいいこと。
しかしそれ以外にも、こうした善意をどうしたらもっと集めて役立てられるのか、という寄付戦略も、政策担当者には真剣に考えてほしいところです。

寄付行為についての研究は日本ではまだあまり見かけませんが、海外では膨大な研究成果があります。
(例えばこれとかこれとか)
そこでは明らかに寄付優遇税制が人びとの寄付行為を促進することが分かっています。

しかし今回のタイガーマスク現象では、人びとは「匿名」で寄付しています。
だから寄付優遇税制は意味ないのでは?という声も聞こえそうです。
またさらには、日本人は匿名寄付を文化的に好む国民性を持っていて、今回はそれが発露したのだ。という分析も散見されます。

しかし私はこれは大きな間違いだと思っています。
例えば匿名寄付の典型である献血では、WHOのデータによると日本は欧米諸国に比べてそれほど高い割合ではありません。(人口1000人あたりの献血者数が、欧米諸国では軒並み30を超えているのに対して、日本は20-29.9のところにカテゴライズされています。)

匿名寄付が多少ニュースになったからといって、それを日本文化と結びつけて語るのは、いわゆる後知恵バイアスなのです。

それでも、宗教観の違いもあるのでは、という意見もあるでしょう。つまり日本人の持つ宗教観に比べて、キリスト教の方が寄付をするであろう、と。しかしそれだと、キリスト教圏内での寄付の違いを説明できません。
例えば骨髄ドナー登録者数でみれば、ドイツは高くイギリスは低い割合です(データはコチラ)。ルターの宗教改革の成果でしょうか?(笑)
そもそも聖書のどこに「善行を積むときは隣人にアピールせよ」と書いてあるのでしょうか!?

というわけで、匿名性を例に、文化や宗教の違いをことさらに強調して日本での寄付の少なさを語るのは、寄付優遇税制を推し進めようとしない政府や、寄付集めに熱心でないNPO関係者に言い訳を与えるだけになってしまうのではないか、と私は危惧しております。

なお、ちなみに、こちらのオランダの調査研究によれば、教育レベルの高さ、宗教心の強さ、経済状態、献血や臓器提供への理解が匿名寄付への意識を高めているとのことです。匿名寄付は税制優遇関係ない訳ですから、やはりそうした個人の社会経済状態・利他心に帰属せざるを得ない訳ですね。参考までに。


寄付白書〈2010〉―GIVING JAPAN 2010寄付白書〈2010〉―GIVING JAPAN 2010
(2010/12)
日本ファンドレイジング協会

商品詳細を見る

スポンサーサイト

Post comment

管理者にだけ表示を許可する

Trackback

trackbackURL:http://sakunary.blog134.fc2.com/tb.php/39-77e2ecc8