考えるイヌ〜桜井政成研究室〜

研究メモ、ゼミなどの教育活動、その他関心事など。

地域連携と大学生

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とある方がツイッターでこんなことをつぶやかれていた。


限界集落となったうちの地域において、大学生や高校生が活性化を提言するだけで去っていくのもうやめて欲しいんだよなあ。提言してもやる人いないから。ゼミとか授業とかでやるのも、もうやめて欲しい。やる気ない地域って言われても高齢化率42%なんだから、わかんないかなあ?



以前、大学のボランティアセンターで働いていた際、こんな事がありました。
どうしても被災地にサンタの格好で真夜中、何の前触れもなくプレゼントを配りたいと言っていた学生がいました。
それがかっこいい、と思っていたんでしょうね。
しかしどう考えてもそれは地域の迷惑。不審者扱いで通報されます。

彼を説得し、彼の意向を汲んでプログラム化し、皆で「昼間」に、「事前連絡」のうえで被災地に行くことにしました。
結果、大成功。地域の方に喜んで頂いて、よかったよかった…しかしそれでこの話は終わりませんでした。
彼は強固に当初の案にこだわっていたようで、「夜中案」を決行してしまったのです。
友達の学生から連絡があって発覚。先回りして現地の警察に「確保」して頂き、事なきを得ました…。
(忘れもしないクリスマスイブの夜。こちらは今の妻とイルミネーションを楽しんでいる最中でした…)

ここまで極端でなくても、冒頭の方がつぶやいておられたことから分かるように、大学が地域に入るのに「地域の事情」を理解せずに勝手気ままして帰る例は多いのでしょう。

私は大学側にいて、学生を地域に送り出すことをよくやっている人間です。
どういうスタンスで学生を送っているのか、よい機会なのでちょっとまとめておきたいと思います。

まず整理しておきますと、大学の地域との関わり方としては、以下の三つの接点があります。

第一に研究的な関わりです。地域から研究の素材を得るための関わりです。
学生・院生にとって研究上、地域に出ていく意義は二通りあると思います。一つは研究を進めていく上での発想と着眼点を得る場としてです。そこでは研究の素材としての、現場で飛び交う「ナマ」の情報=暗黙知を多々見聞きし、それをどのように料理(形式知化)すべきかを考えることができます。二つ目に、研究上のデータを収集するための関わりです。フィールドワークとしての地域参加です。

第二に教育的な関わりです。地域参加が学生の成長に何らか(知識的にも、人間的にも)あると考えます。
例えば、最近の学生はおとなしくなった、と言われますが、そういうわけでもありません。ただ、普段は会わない層の人達とのコミュニケーションが極端に苦手だったりします。つまり、異質な他者との交流不足があったりするのです。社会に出る前に、職業人、あるいは研究者として第一歩を踏み出すためにも、地域参加の経験は重要と考えます。

最後は社会貢献です。いわゆるふつうのボランティア活動ですね。
これは(下記に述べるサービスラーニングのようなもの以外は)授業には関係しないかたちで、突発的に行うことが多いです。災害時とか。

いずれの場合においても大事なのは、いかにお互いWIN=WINで大学側と地域側が協働の取組を行えるかだと考えています。

例えば調査目的と言っても、多くの場合において、一方的に調査対象とされることには地域側にとっては違和感があることは承知しています。このため私は、とりわけ学部生のグループ研究で地域に協力を得る際には、地域にも得るものがあるかたちでの、調査手法で取り組むようにしています。例えば学生が何か(地域の協力を得て)地域活性化の取組を行い、その成果を検証するような、アクションリサーチ的な手法などです。

また教育目的の地域参加で重要なのは「リアルな体験」なので、出来る限り地域側の文脈を重視して参加させて頂きます。ただ、学生が参加しやすいようにプログラミングする必要があるので、そこでのコーディネートをお互いに協力のもと、させていただける地域との連携が多いように思います。

なおこうした関わりの接点はそれぞれ別々ではなく、相互に関わり合って充実していくと考えています。例えばサービスラーニングというボランティアを取り入れた学習では、教育的意義と社会貢献意義を併せ持っています。(こちらのエントリーもご参照ください

また、大学と行政・NPOが協働するなかで、継続性をどう担保するかという問題はかなり重要です。
必ずしもすべて継続性を前提にしなくてもよいとは思いますが、もし継続的(あるいは断続的)に何かプロジェクトを行おうとした場合、大学では、学生・院生は数年で卒業しますから、そのためには協働のスキームを相互に整える必要があります。例えば大学側では授業やインターンシップ、ボランティアプログラムのかたちを取りながら事前・事後の指導をきちんと行う。他方で行政・NPOの側では学生・院生を受け入れることでどのように組織のミッションを達成するのかというビジョンを明確にしておく。ボランティア・マネジメントがしっかりできるかどうかが問われると思います。

ここで「行政・NPO」と書いたのは、先の限界集落の例でつぶやかれていた方の話のように、地域の「現場の人達」にコーディネートしろというのは、負担の大きい、ある意味無茶な話だと思っているからです。
ですから地域の活性化を組織的に行うところが間に入って頂くのが、大学が地域に入る際にはスムーズなのではないかと考えています。

また私の場合、かなり意識的に「大学側」というスタンスを持って取り組むようにしています。
学生が地域に迷惑をかけないようにと配慮する一方で、自分が第一にサーヴィスをすべき対象はやはり学生であるとも考えています。
そのため、これは学生のニーズに合わないな、あるいは学生の手に余るな、と思う地域側からの申し出については、申し訳ありませんが事情を説明してお断りするようにしています。

最後に。
こうした取組をしてきて感じるのは、結局のところ大学・大学生に出来ることに限界があると言うこと。
協働の取組は、思ったような成果をあげることができない場合もあります。というか、その方がほとんどです。大学生の関わりは一時的ですし、それによって地域が大きく変わることは(めったに)ありません。そして学生自身も「自分たちは何もできなかった」という無力感を持ちがちです。
しかし、お互いに何が教訓として残ったのかは、必ずあります。
それを取組後にふりかえりできれば、(取組自体はぱっとしなかったとしても)次につながる何かがあるのではないかと考えています。


なおサービスラーニングについては一昨年、大学の取組をまとめたものとして出版させていただきました。

ボランティア教育の新地平―サービスラーニングの原理と実践ボランティア教育の新地平―サービスラーニングの原理と実践
(2009/10)
不明

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