考えるイヌ〜桜井政成研究室〜

研究メモ、ゼミなどの教育活動、その他関心事など。

タイガーマスクその後

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年末年始の児童福祉施設への匿名寄付行為。
一過性に終わらないように、寄付控除の仕組みを充実させることが大事ではないかと以前の記事でも書いた。

その後、いくつかの動きが出てきている。
政策的動向としては、「新しい公共」円卓会議の委員の皆さんががんばって、「NPO支援税制」の大幅な改正が昨年の税制改正大綱で盛り込まれたそうで。

NPO法人フローレンスの駒崎氏いわく、これが実現すれば欧米並みに寄付控除が受けられるようになるという。しかし、いま、衆参のねじれ現象の混乱した政治状況において、寄付税制改正法案は廃案になりそうだと言うことです。

詳しくは駒崎氏のブログを読んで、またこちらのシーズのホームページから議員に訴えかける雛形を使って、ぜひ多くの方がアクションを起こせたらと思います。

私が寄付控除が充実すればよい、と思うのは、NPOや児童福祉施設の運営が潤うから、ではありません。

ひとつは、行政不信、政治不信が根強い日本では、もっと納税以外の形で個人の意思が、直接的に社会の公共財を充実させることについて、反映させられる資金提供システムが必要だと思うからです。
我々がいま日本で寄付をするとき、行政機関や政治家や限られた公益法人・NPOにする場合にしか寄付控除はなく、それ以外のNPO等に寄付しても、いまは「公的」な行為だとは見なされません。
食品を買ったり遊興施設で消費するのと同じ扱いしか、今は見なされていないのです。

私が今年、確定申告でNPOに寄付した控除を処理しようとしたときのことです。
寄付控除の選択肢は、A都道府県、市区町村に対する寄附、B都道府県が条例により指定した寄附金、C市区町村が条例により指定した寄附金、D都道府県及び市区町村の両方が条例により指定した寄附金、E住所地の共同募金会、日本赤十字社の支部に対する寄附、Fその他。となっていました。

「その他」!!??

これはいままで公的な寄付は行政や政治家にするのが一般的で、それ以外は「例外」であったというあらわれ以外の何ものでもないのではないでしょうか。。。

寄付控除が充実することで(実名で)寄付する人が増えることで、どのような社会をつくりたいのか、という人びとの意思が分かりやすくなるのではないか。
こうした「風通しのよい公共」をつくる第一歩になると考えています。

なお駒崎氏は日刊サイゾーの取材で、寄付の効果について、以下のように述べています。


今回のタイガーマスク現象で児童養護施設に国民の目線が集まりました。その結果、1月18日付の東京新聞によると、30年ぶりに厚生労働省が児童養護施設の職員数を増やすことを打ち出したそうです。実は、政府は国民の目線に弱いのです。養護施設に国民が寄付をするだけで、国を揺り動かすことができます。実際、国というのは本当に動きが鈍いので、ソーシャルメディアなどで"俺たちで勝手に支援しようぜ"って盛り上がれば、それを国や自治体が追いかけてきます。つまり、寄付をすれば世の中を変えることができるんです。


寄付が社会運動になるという視点。なるほど、です。

追記。

タイガーマスク現象を巡る動きとしてもう一つ興味深いのは、児童支援施設の職員や入居している(していた)当事者が声を上げ始めたこと。いや、以前からあげていたのかも知れませんので、それがマスコミやネットなどの媒体に載るようになってきたこと、ですね。

タイガー現象、なんか違う 施設出身者が13日にシンポ --マイタウン大坂(2011年3月9日)

記事から引用。

 施設にいたことを打ち明けると、少年院や障害者施設と勘違いされたこともある。実情をよく知らない人から「かわいそう」と同情され、「私ってかわいそうな存在なんだ」と思って自信をなくした。「施設は私の居場所だった。施設だからかわいそうと見るのは偏見。ニーズを踏まえない支援は偏見を助長するだけだと思う」

 それでも、世間の目がむいたことをチャンスに変えようと、新井さんたちは施設の実情や当事者の思いを多くの人に知ってもらうためにシンポジウムを開くことにした。


非常に良い企画だと思う。耳目をひく形で戦略的に当事者からメッセージがマスコミ行政等に発せられると面白い。
確かに齋藤純一氏の人称的連帯の議論にもあるように、「見える」支援は時にスティグマを生んでしまう。
私は寄付控除の充実はこのスティグマもある程度、払拭するのではないかという期待がある。
つまりこういうことである。寄付控除があることで、「私はあなたたちを『かわいそう』と思って寄付するわけではない。自分が税金を払う代わりに(あるいは払いたくないので)施設に寄付したのだ」というエクスキューズが可能になる。

他方で児童養護施設の戦略性も必要だろう。
どこでも寄付しても同じように控除が受けられるようになれば、より自分たちの団体に寄付してもらうための努力が必要になる。支援がニーズに合わないことを非難するだけでなく、ニーズにあった支援を受けられるように情報発信することも大事なのではないだろうか。当事者が卑屈にならずに寄付を集める方法が、いろいろあるはずだ。

ただしこれが、公的支援の縮小の理由になってはいけないのは言うまでもない。
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