考えるイヌ〜桜井政成研究室〜

研究メモ、ゼミなどの教育活動、その他関心事など。

スポンサーサイト

Posted by sakunary on

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

日本の知の体系も破壊した震災

Posted by sakunary on   0 comments   0 trackback

職場(学部)で、ある意義深いブレストを行った。それは今回の大震災を受けて、応用科学(化学じゃないよ)を標榜するわが学部で、教育研究的に今後、どのようなことを行っていくべきか、という議題で行ったものだ。各分野の先生方からは口をそろえて、現在の有事においては既存の学問も危機を迎えているという認識があがった。

ある先生から、この非常時に既存の学問が陳腐化しているという声があがって、一同それに同意した。原発専門家の発言が市民に響かない。平時と同じ政党政治を行っている政府。あらゆることが想定外。すなわち、日本の社会科学全体(を中心にそれ以外も)がその学問パラダイム自体を見直さなければならなくなっているという認識である。

それはこれからますます顕著のなるだろう。例えば被災地では今、市町村全体が別の市町村へ「移住」するケースが生まれている。こうした事態は途上国では「国内避難民」(IDP= Internally Displaced Person)という概念があり、その研究蓄積もおおいにあるそうだ。阪神大震災の反省もあるが、例えばコミュニティを維持したまま移住することが重要だという話、これはまさに途上国の経験が逆に先進国たる日本に活かされるかと思う。

しかし途上国と異なる課題になるのは、先進国のある意味硬直化した社会システムの中では想定されていなかったのではないかということである。こうした議論も会議で話された。例えば今、被災地外では競って避難民を受け入れているが、それが長期化したときに医療・教育・介護・生活保護の負担が増大することも想定しているのか?小さな自治体では下手すれば財政がパンクしてしまうのではないか?大都市でも、例えば大坂では生活保護行政は今でも限界となっているのに、被災者を受け入れて財政どうするのか。現場でもケースワーカーや児相の職員はまわせるのか??

有事の学問ということで言えば、経営学もそうしたチャレンジにさらされる。さっきNHKクロ現でもやってたが、これからしばらく日本企業は計画停電、資材燃料不足、日本ブランド失墜という異常事態の中での経済発展という、ありえないくらい難解な方程式を解いていかねばならない。

また、その議論の過程で個人的に改めて考えたのは、NPOと行政との協働についてである。NPOと行政とのパートナーシップ、阪神大震災から15年。NPO法成立から13年がたった。阪神大震災時、ボランティアのインパクトは大きかった。「ボランティアって何だ」「NPOって何だ」。研究関心が集まり関連学会が立ち上がり、大学での講義と教員も増えた。その蓄積は今回、活かされているのであろうか。平時とは全く議論の前提が違っているが、有事の研究蓄積は全くなかったといっていいのではないか。
(今回、即時活動を開始したNPOに対する政府からの支援、とりわけ財政的なそれは、まったくと言っていいほどなかった。)

いずれにしても、これまで日本には(多くの分野において)「復興復旧の学問」も「有事の学問」もなかったのだという事実に、ガクゼンとする。
こうした意識から今後、学部では研究教育をどう行っていくか、という話し合いをしたのであった。ブレスト段階であり結論はまだでないが、大幅な教学改革が近々予想されるので、重たい、しかし興味深い宿題ができた格好だ。

しかしこれは「科学」自体の限界でもある。
現在における科学とはすべからく、経験科学である。これまでの経験を分析考察することによって、含意や一定の法則を導き出す。ところがその拠り所となる経験自体、前提が全く異なるものであった場合、現状に役立つ含意も、普遍的な法則も、導くことはできない。たぶん、ちょっと感度が高い学生ならば、いまのそうした「知」のあり方に満足できず、大学の授業もつまらなくて受けてられないのではないか。講義で語られる内容が、現実に何も示唆を与えるものではないのだから。

災害がもたらした被害は甚大すぎた。そしてそれは間違いなく、日本人のものの考え方に大きな影響を与えるはずである。そうしてきっと、知のあり方自体が問われることになろう。新しい時代を切り拓くための新しい知のあり方。書いていて何だか卒倒しそうなぐらい、壮大なテーマである。日本の第二次大戦時、そこここで天下国家を語る風潮があったというのも、今の雰囲気から納得できる。これからの日本、そして世界を改めて語る時期が到来しようとしているのだろう。

スポンサーサイト

Post comment

管理者にだけ表示を許可する

Trackback

trackbackURL:http://sakunary.blog134.fc2.com/tb.php/58-4c604825
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。