考えるイヌ〜桜井政成研究室〜

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災害ボランティアマネジメント論:ボランティアステイトメントの重要性

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アメリカの全米災害対応ボランティア組織連合(National Voluntary Organizations Active in Disaster; National VOAD)のサイトで大変興味深い文言を見つけました。
災害ボランティアに対しての、自分たちの考え方を明文化したものです。

そもそも通常時においても、ボランティアを受け入れるNPOや施設等では、その受け入れ方針を明文化しておくべきであることを拙著『ボランティアマネジメント』でも言及しました。
これを「ボランティアステイトメント」と呼びます。
ボランティアステイトメントを作成することで、組織内外にその価値観を共有することができるのです。

しかし、非常時のボランティアマネジメントは、通常時のそれとは勝手がずいぶん異なったものになります。
そのため災害ボランティアセンターや、災害対応NGOでは、「災害時のボランティアステイトメント」を(普段から)作成し、明示しておく必要があります。

ただ、そうした文書をインターネット上で探しても、日本の事例は全く見つかりませんでした。
そもそも日本では「災害ボランティアマネジメント」があまり定式化されておらず、「名人芸」となっているのではないでしょうか。

このブログでは何回かに分けて、海外の先行研究を参考に、「災害ボランティアマネジメント論」の基礎的部分を整理してみたいと思います。

その第1回目として、災害ボランティアステイトメントについてとりあげます。
ここではVOADのそれを例としてあげておきたいと思います。



全米災害対応ボランティア組織連合「災害時の外部からの自発的ボランティアのマネジメントに関する規範と価値」

1.ボランティア活動と地域活動
 ボランティア活動は全ての健全なコミュニティの価値ある一部である。ボランティアは社会のあらゆる階層から参加し、またかけがえのないサービスを頻繁に提供する。非常時には全ての人が強みと資源を発揮する可能性を持っている。

2.ボランティア活動と非常時マネジメントの枠組み
 ボランティアには、災害対応するための、効果的な支援が必要である。彼らが与えられた価値は、非常時マネジメントの枠組みに完全に組み込まれたときにのみ、最大限発揮されるものである。

3.所属の価値
 理想的には、全てのボランティアは既存の組織に所属すべきであり、災害対応活動に特化したトレーニングを受けるべきである。しかしながら、自発的な性質を持った個人ボランティアも当然のものである。したがってそれは予期され、計画され、管理されなければならない。

4.ボランティア参加の4段階
 外部からの自発的ボランティアの価値ある適切な役割は、緩和、準備、対応、復旧であり、それは他地域のコミュニティニーズと同様である。対応段階ではボランティアに長期的な所属とコミュニティ参加の機会を提供する。

5.マネジメント・システム
 ボランティアは既存の非常時マネジメントシステムにおいて、訓練され、配置され、スーパーバイズされた時、価値ある資源となる。寄付マネジメントと似たものであるが、全ての非常時マネジメントの計画においての基礎的な要素とは、外部ボランティアを現地でコーディネーションする責任の明確さである。ボランティアコーディネーションチームはこの人的資源を有効活用を保証するメカニズムである。

6.責任の共有
 ボランティアの動員、マネジメント、そしてサポートについては、責任はまず州の支援の元で地方自治体と非営利機関とにある。専門的な計画、情報の共有、そしてマネジメント構造は、成果を調整し、ボランティア参加の利益を最大化する。

7.ボランティアの期待
 非常時のマネジメントシステムの中でボランティアはすばらしい参加者となる。それは、彼が柔軟的で、自信を持ち、リスクを認識し、すすんで地域の非常時マネジメントの専門家からコーディネートを受けた場合による。

8.ボランティアのインパクト
 ボランティア活動で優先されるのは他者への援助である。もしこの自発的な活動がよりよくマネジメントされたとき、もちろんボランティア自身にも前向きな影響を与えるし、なにより対象者とそのコミュニティの復旧過程に貢献することとなる。

9.既存の収容力
 全てのコミュニティにはボランティアを効果的に動員し参加させる方法を知っている個人と組織を含んでいる。非常時マネジメントの専門家とVOADのパートナーは、外部ボランティアを包摂するために、全ての既存の収容力をはっきりさせ、活用することを推し進める。

10.情報マネジメント
 明確で、継続した、タイムリーなコミュニケーションは外部ボランティアのマネジメントを成功に導く基礎である。皆を教育し、混乱を最小化し、期待を明確化するために、様々な機会と発言が確保されるべきである。

11. 用語の統一
(略)

※National Voluntary Organizations Active in Disa ster (National VOAD) is the forum where organizations share knowledge and resources throughout the disaster cycle―preparation, response and recovery―to help disaster survivors and their communities.

いかがでしょうか。(訳がまずいのはご勘弁を。)
一読しておわかりだと思うのですが、根っこにあるのはボランティアへの信頼と、そして要は問題は自分たちのマネジメントにあるのだという、明確で一貫した姿勢です。決して支援活動の問題を、ボランティアのせいにしていません。

また、読んでいて、ボランティアに行ってみよう、と勇気づけられますね。
ボランティアを募集する際には、このようなメッセージがまずは必要なのです。

もし仮に書いてあることと事実が異なっていたら、その時は苦情を言えばいいのです。ある意味、このステイトメントは「評価」の基準でもあるわけです。

今回の東日本大震災では、様々な機関が、様々な方法で、様々なメッセージがボランティアに向けて発せられました。
しかし、このようなボランティアステイトメントは管見の限りでは無かったように見受けられます。
今後、その必要性が理解され、広がっていってほしいと思います。
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