考えるイヌ〜桜井政成研究室〜

研究メモ、ゼミなどの教育活動、その他関心事など。

自治体による被災地救援活動の課題

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京都府で、被災地に派遣した職員の振り返りがあったようです。


被災地支援 現場の提案

 東日本大震災の被災地に派遣された府や自治体の職員、学生らが、互いの経験を共有し、継続的な支援のため、どんな課題があるのかを話し合う会合が28日、上京区のホテルで開かれた。

 府の地域防災計画の見直しを進めている専門家部会が呼びかけ、実現した。これまでに府や各自治体が被災地に派遣した職員数は1000人を超える。

 会合には府に加え、京都市、舞鶴市、南丹市、宇治市、城陽市など64人が出席。

 「避難所支援」「健康対策」「給水や宅地の危険度判定といった技術支援」など七つのグループに分かれて討論。最後にそれぞれのグループが意見発表した。

 避難所の運営については、「救援物資が大量に余っていた。現地には資材を効率よく配給できる専門の職員を置くことが望ましい」「女性の保健師が派遣されると、女性の被災者は話がしやすいようだった。男女の配分も工夫してみては」といった意見が出た。

 また、現地で学んだ教訓として「様々な応援部隊が訪れても、現地の自治体が受け入れ態勢を整えていなければ、支援が有効に行き渡らない。府も応援部隊を想定した防災計画を立てておくべきだ」と提案。

 被災地の今後の支援に関しては「派遣される職員同士で、節目の引き継ぎをしっかり行い、活動を継続させよう」と呼びかけた。

 司会を務めた牧紀男・京都大防災研究所准教授は「みなさんの経験が重要な資料となる。東海・東南海地震に際しては、近畿で被害が甚大だった近隣県を府が支援することになるだろう。今後、被災地を支援する方法と、支援を受け入れる方法のそれぞれで、マニュアルの整備を急ぐべきだ」とまとめた。

(2011年7月29日 読売新聞)



う~~ん、なんかピンと来ないんですけど…。

記事中の、
「救援物資が大量に余っていた。現地には資材を効率よく配給できる専門の職員を置くことが望ましい」
「様々な応援部隊が訪れても、現地の自治体が受け入れ態勢を整えていなければ、支援が有効に行き渡らない。府も応援部隊を想定した防災計画を立てておくべきだ」

これって完全に、コーディネーションの問題ですよね。
コーディネーションできる人材をまず派遣すること、という一文は、きちんとマニュアルに載せるのでしょうか…。

それが重要なことであると、まずは気づいてほしいのですが、さらに問題なのは、コーディネーションできる人材とはどのような人材か、ということです。



今回、被災地自治体への、被災地外の自治体による支援者派遣で露呈した問題(のひとつ)というのは、「行政は異なる組織との協働が得意ではない」ということだと思います。
これは、京都府の派遣の仕方が特殊だったため、余計に問題をこじらせた側面があります。

多くの自治体、特に基礎自治体では、何らかの、もともとのつながりによって、職員を派遣していたようです。
例えば典型的なのは、姉妹都市です。私が訪問した宮城県多賀城市の避難所でも、姉妹都市である奈良市の職員さんがおられました。
姉妹都市でも、どれだけ職員間の交流があるかと言われると、それほどなさそうですが、まあとにかく何かの「つながり」がある自治体を支援した外部自治体が多かったはずです。

しかし、京都府の場合、まったくつながりのない自治体に職員は派遣されました。
なぜかというと、京都府が参加している「関西広域連合」という、よくわからない組織で役割分担がなされ、「じゃあ、京都府と滋賀県は福島県に派遣ね!」と決まったからです。
これは一見、効率的なようでいて、もっとも非効率なやり方です。
なぜって、被災地自治体に関する情報が、応援側にまったくないわけですから。

「情報の粘着性」という概念が組織論で存在しています。
これは、情報の移転にコストがかかる(粘着性が高い)場合、その情報の重要性は高く、組織にイノベーションを起こす源泉となる、という議論です。
つまり今回の教訓は、そうした情報をまったく持たないままの支援は、あまり役に立たなかった、ということではないのでしょうか。



そして京都府の職員さんは、現場の避難所では、市町村職員との連携で運営支援を行っていました。すると、「都道府県と市町村」という立場の違いから気を遣ったり…といったことはなかったのでしょうか。

被災地緊急支援では、「即興チーム」が、現場の支援コーディネートに当たらざるを得ません。このとき、立場をこえてその場の「最適解」を話し合いの中で見つけることが必要になってきます。

そもそも、私は詳しく知らないのでどなたかご存じでしたら教えてほしいのですが、今回の震災ではなぜ至る処の避難所で、行政職員が「管理」していたのでしょうか。

実際、避難所の多くでは、避難者によって自発的に「自治活動」が起こっていたと聞きます。あるいはそうした動きがなかった避難所であれば、自治できるまで支援者が管理する必要があったでしょうが、それにしても行政職員、それも外部から応援に行った人である必要はありません。

そうなると、応援自治体の職員さんは、肩書きを外した「いちボランティア」として、ニーズがある活動に従事すればよかったのではないでしょうか。

わたくしが16年前の阪神・淡路大震災の時に、ボランティアで訪れた避難所では、ボランティアコーディネートは中学生が行っていました。
私は年下の中学生の指示に従い、活動に従事したのです。(中学生の方が、粘着性の高い情報を有していたわけですね。)
ちなみにそこのボランティアのリーダーは大学生でした。




今回、被災した自治体以外の応援自治体も、教訓は大きかったと思います。
ぜひ、きちんとした検証チームを外部の専門家含めて組織し、マニュアルだけでなく、有効に機能する被災地支援のためには何が必要なのかを検討してほしいと思います。

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