考えるイヌ〜桜井政成研究室〜

研究メモ、ゼミなどの教育活動、その他関心事など。

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韓国の社会的企業は農村を活性化するのか?

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韓国農村経済研究院(KREI)のお招きで、国際セミナー"Social Enterprise and Rural Community Revitalization"(「社会的企業と農村コミュニティの活性化」)に登壇。お題は日本の社会的企業と農村コミュニティ活性化でした。

IMG_9323.jpg


一人だけの日本人でしたが同時通訳(^_^;) 

ちなみに韓国の社会的企業事情についてはコチラを参照下さい。

今回は、研究者・運動家・官僚がひとつのテーブルについて、社会的企業について議論するという、私のような海外の研究者にとっては、国内事情がよく分かる、大変贅沢な環境でした。そこで聞いた話をいくつか、紹介します。

まず、韓国の社会的企業は、国家がつくれ、と号令をかけて、各自治体にノルマを課し、ここでは2つ、ここでは3つ、というように割り当てられ、それでどんどんつくられていったそうです。なんだか日本での、介護保険前夜の介護事業所みたいですね。あの時、ゴールドプランだか新ゴールドプランだかの枠組で、各自治体が介護施設数をノルマでつくらされてました。その結果、介護に不慣れな業者が認知症対応グループホームを建てたりして、その結果、虐待事件が起きたりして、問題になったりしました。韓国の社会的企業も、政府は「成功している」と言っているそうですが、すべてがすべてうまくっているわけではなく、醜聞も聞いているとの指摘が、実践家からありました。

あと、韓国はソウル一極集中が、日本の東京一極集中以上に、激しいのですね。私も実はソウル以外、行ったこと無いので、昨日の議論で初めて知ったのですが、韓国の農村は日本の農村に比べて、「何も無い」のだそうです。農村の社会的企業支援のための中間支援組織が各地にあるそうですが、そこに就職してソウルから地方に引っ越した女性の方も、最初は大変戸惑ったそうです。曰く、夜はまっくら。何も「文化」が無いそうです。日本の場合、大抵の「田舎」は、小一時間も車を走らせれば盛り場/遊び場は多少ありますから、ちょっと想像がつかないですね。だから、韓国の若者は皆、ソウルに行ってしまう。

日本の若者が(他世代に比べて)田舎暮らしを望んでいる人の割合が高いというデータを出したら「何故だ?」とすごく不思議がられました。若者が農村に移住、というのは、新潟県の池谷集落の話は有名ですね。中越山越地震の後の、NGOのJENの活動がきっかけとなっているそうです。

また、韓国の地方での社会的企業支援は、労働部、農林部、産業資源部などで、似かよった支援施策がなされているようです。この政策の重複は解消できないのか、という研究者や活動家の指摘に、労働部の職員は「解消に向けて努力はしている。将来的にはなされるだろう。楽観的に捉えている」との回答でした。どの国の官庁も似たようなことをして、どの国の官僚も同じようなことを言うのだなーと、変な意味で感心した次第です。

中間支援組織では社会的企業の経営永続性のために、コンサルタントを派遣しているみたいですが、これもソウルから派遣せざるを得ない。すると、地方の事情を理解していないコンサルはあまり役に立たないことを教えて帰ったりして…って何だかこれも、どこの国の話を聞いているだろうかと苦笑してしまいました。

懇親会ではアウェー感というかぼっち感が満載…でも、日本語で話しかけて下さる方もいらっしゃいました。というか、向こうの農村研究者は日本語がお出来になる方が多い。それもそのはず、多くが日本に留学されている。日本の農業経済学は伝統的にマルクス経済学の先生が多かったこともあり、あちらの方たちもまさにその典型でした。ネオリベや「上からの押しつけ」にひどく抵抗感を持っており、議論は「批判のための批判」という感じもありました。それに対してヨーロッパに留学中の別の先生が「ヨーロッパの学者は韓国の学者のように政策に口出したりしない。学問の役割は政策の価値や評価を検討し、客観的に議論できる材料を提供することだと考えているからだ」などとご発言されたり、と、韓国の学術に関する議論も垣間見れたりと興味深かったです。

確かに「運動家的スタイルの学者」は、ある種ちょっと古くさいものに映りました。しかし同時に、いや、かえって今の日本のこの現状からして、必要なのかもと思ったりもしました。3.11以降、研究者の無力感を強く感じましたし、また原子力のことでは、科学者の信頼も多く損なわれました。細分化した学術界が、社会に対しどのように向き合えるか…という大きなテーマはありつつも、私自身ができることってなんだろうと考え続けている次第です。

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