考えるイヌ〜桜井政成研究室〜

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除染ボランティアに抗議します

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8日から環境省が除染ボランティアの情報を流し始めています。
(環境省「除染ボランティアの募集状況等について」

私は、除染活動に素人である住民やボランティアが携わることに大変な危惧を頂いています。
チェルノブイリでは除染作業員に大変な後遺症が発生しています。(「とても危険!除染作業での内部被曝を避けよう/カレイドスコープ」

チェルノブイリと比べても…とおっしゃるかも知れませんが、現在の福島市の土壌汚染の状況は、チェルノブイリの時の「補償つき任意移住エリア」あるいは「放射線管理区域」です。(こちらのブログ記事を参照しました)

また、空間線量で言えば、日本の「放射線管理区域」は外部放射線による実効線量が、3月間につき1.3mSVを超えるおそれのある区域ですから、単純に言って、毎時0.60マイクロSv以上の地域はそうなります。例えば、福島市のモニタリングポストの測定線量は、11/8現在、0.99マイクロSvです。とても高い。

さらにいえば、電離放射線障害防止規則第6条によれば、妊婦の放射線業務従事者の受ける線量の限度は、妊娠中、内部被ばくによる実効線量については1mSvに。腹部表面に受ける等価線量については2mSvに押さえなければならないとしています。これは単純に妊娠中を10ヶ月と計算すると、毎時0.28マイクロSv以上となります。(例えば11/8現在、南相馬市の空間線量は毎時0.41マイクロSvとなっています。しかし、東京新聞の11/9記事によれば、南相馬市には70名の妊婦がいるそうです) 

この様な状況を考えると、そもそも住民を移住させることが先で、そこに留め置いている政策自体が信じがたいところがあります。さらには除染という危険な作業に、住民やボランティアを携わらせていることは、もはや言語道断としか言いようがありません。

また実際に、今回の除染活動でも、高線量地域において、作業員は無防備な格好で線量も管理せず、作業に従事している姿が報道等を通じて伝えられています。
(参考:冨田きよむ氏のブログより。「10月28日。福島市南向台小学校前にて。除染作業員は線量を知らされていなくて、線量管理もまったくしていなかった。不安に思った作業員は、ココどのくらいありますかと聞いた。」)

しかしながら、実に気軽に参加できる活動であるかのように、除染ボランティアの情報は流されています。
例えば、「重装備は必要ありませんが、長袖のシャツ、マスク、長靴の着用をお願いします。なお、作業終了後はうがいを行いシャワーを浴びるなど、 気をつけていただければ大丈夫です。」というように(福島市社会福祉協議会のサイトより)。

実際、私の大学の学生も「参加してみようかな」ということを言っていたことがありました。その時は上記のようなことを説明し、止めた方がいいと思うと話しました。

このようにリスクが非常に高いボランティア活動に関しては、慎重な議論が必要と考えています。ですからこうした活動を国が改めて率先して行い始めたという今回のニュースは、看過できません。ボランティアの研究者として、また、かつてコーディネート業務に携わっていたものとして、この問題に口を閉ざしてはいけないと思いました。

実態を把握するため、関係各所に電話をさせて頂きました。
どのような作業なのか、内部被ばく対策はどうか。妊婦などは受け入れ禁止しているのか…などなど。
ご対応頂いた担当の方々は、お忙しいところを皆そろって懇切丁寧に、除染ボランティアの趣旨、地域の現状、取組の詳細について教えてくださいました。

電話取材結果についてはこのブログ記事の最下部の通りです。ご覧頂いておわかりの通り、皆、放射線の管理については、できる限り被ばく量を減らし、健康に害がないようにと配慮をされていることが伺われました。

少し、安心したのも確かです。電話する前は、もしも安全対策が充分でないのなら抗議しなくてはならない、と少し肩に力が入っていました。

しかし同時に、どうしてもぬぐいきれない違和感も残りました。
現場の方々が真剣であればあるほど、電話した「こちら側」との温度差を強く感じたからです。

住民の健康や生活を本当に考えたとき、何兆も費やして除染をするぐらいならば、その費用を移住のために使った方が「まとも」だという信念が私にはあります。

しかし、国の方針としてそのまま高濃度汚染地に留め置かれて、除染が唯一の希望となっている現地の方にとっては、最適解は「できる限り被ばく量を抑えて作業する」となってしまっているようです。そこにはある種の合理性があって選ばれている選択肢です。しかし、それ以上の大きな問題については考えられる状態ではない。考えても仕方がない、と思われているのかも知れません。

私は電話を切って「待てよ」と考えることができました。しかし電話の向こう側は、立ち止まって考えることができないのでしょう。繰り返しますが、除染活動をボランティアがするなどという状況はあってはならない。しかし非常時だからしなければならない。この論理自体がおかしいのですが、住民の方にはどうすることもできず、それがそのまままかり通ってしまっているひとつの「現実」がある…。

被災地の方には、必死になっておられるところを冷や水をかけるような文章だとは思いつつ、非・被災地の人間の感覚を伝えることも必要ではないかと思い、この記事を掲載しました。

日本全体の絆がずたずたに切れている。狂気の沙汰に陥っている。

私は、除染ボランティアを被災者に、そして国民全体に勧めているこの国の政府に、強く抗議します。
国民の、被災者のことを想う感情を利用するこの取組は、強制するよりも、たちが悪いです。

またボランティアの関係者には、ぜひともこの問題に口を閉ざさずにいてほしいと思います。



(追記)
私は除染の効果自体、疑問があります。
福島市の広報誌によれば、除染活動の成果としては、例えば渡利地区の南向台小の通学路(路上1cm)で、空間線量は2.4→2.1マイクロSvに落ちた程度だったそうです。

(11/11 追記)
書き忘れましたが、放射線障害についてはボランティア保険の補償対象外です。
たいがいの保険は免責事項に入ってます。
労災も、ボランティアですから、もちろんおりません。
つまり、「自己責任」です。おそらく国も何も補償しないでしょうね。だって勝手に行って、勝手に病気になったという整理でしょうから…。


(参考:電話取材の記録)

<コープふくしま>
・現在募集中は専門家ボランティアと一般(作業員)ボランティア。
・作業場所は伊達市。
・服装は長袖の普段着。そんなに被ばくしないので気にせず家に帰ってもらってよい。
・作業による被ばく量は総計で7~10マイクロSvとのこと。
・各作業グループには専門家が配置され、安全指導等にあたっているそうです。
・HP上ではNPO法人放射線安全フォーラムが安全管理にあたることになっていますが、実際にはNPOが忙しくなっており、上記の専門家ボランティアを募集して対応しているようです。
・高圧洗浄は放射性物質を右から左に動かすだけなので意味ない。表土を削る作業が主。

<福島市社協>
・中身は福島市が行っているので詳しいことは分からない(募集だけしているっぽいです)。
・もしも妊婦が来たらお断りする。未成年も同様(ただし保護者の同意があれば考える)。

→そこで福島市政策推進部危機管理室にも電話して聞いてみました。以下その内容。
・基本的に市が作成した除染マニュアルに則る。
・ボランティアがする作業としては、落ち葉を拾ったり、業者が持ってきた汚染されていない土を庭等にならしたりする作業で、被曝量は少ない。(福島市の広報誌によれば、作業による積算線量は2~4マイクロSvとのこと)。高圧線上などの作業は業者が行っている。
・もしも年間被曝量1mSvを超える人が出たらその場で作業を中止させる。
・マスクは支給されたものなので、まちまち。防塵マスクもあればコンビニマスクもある。
・服装は長袖の普段着で。気にされる方のために、替えのマスク・軍手は用意し、また衣服を捨てて帰れるようにゴミ袋も用意。
・妊婦が来たら…分かればその場で断るが、どうしてもと言われると…(後は自己責任?)

(追記 11/11)

以下、有村眞由美さんによる除染ボランティアについての電話取材記録。本人許可の上、転載です。
(参考サイト→「何か問題が起きても「自己責任」の除染ボランティアは要注意」THE INCIDENTS インシデンツ
1。衣類の持ち帰りについては特に言及なし。
2 マスクは普通ので十分。福島市は配布するということで、質を聞くと、風邪用。軍手を配るところもあります。*ゴム手袋ではない。

3 リスク周知は特に言及されていませんでした。

4 保険のカバーについての周知もありません。勧誘方法や、どのタイミングで保険の話しをするかについて、一言いいたいところがあります。

5 危険についての統一見解というのは訊ねていません。しかし、電話をして私の感じた彼らの統一見解は、人も居住しているエリアで、数時間の作業では危険はない、危険な場所をさせるわけではない、というものでした。

厚生労働省や環境省にも問い合わせました。除染ボランティアは、住民でもなければ、労働者でもない。汚染エリアに居住していた住民として保護をうける対象にもならなければ、労災の対象にもならない、保険の対象にもならない、という保障の谷間にうもれる潜在的な存在なのではないか、という危惧があり、聞き、なおかつ、厚労省にはなんとかしてほしい、とリクエストもしました。

除染を待ち望むしかない住民の方々を思うと除染活動にブレーキをかけようとしているようで心苦しいのですが、除染を待ち望むしかない状況に置かれ続けていることのほうが問題なのだと思っています。ボランティアを募って、被害をこれ以上拡大させないように、しかも、まだ細胞分裂のある若者が純粋な心で赴くのではないか、それをなんとかとめたい、という思いでいます。

転載以上です。
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