考えるイヌ〜桜井政成研究室〜

研究メモ、ゼミなどの教育活動、その他関心事など。

除染ボランティアに抗議します(その2)

Posted by sakunary on   8 comments   0 trackback

除染ボランティアについて、ある方からご意見をメールで頂きました。

この方は福島に親族が多く、今回の震災以降、支援などでたびたび行かれています。そこで聞かれた、福島の人たちの、今の想い。そして除染ボランティアについてもどのように思っておられるのか、ご報告くださいました。またそうした話を聞かれ、ご自身はどうお考えなのかについても、お聞かくださいました。

もちろん、この話は、福島の方たち全員が思っておられることではありません。
そして、「いま」の気持ちですから、これからどう変わるかも、分かりません。

以下、転載しますが、そういうことで、一つの参考としてお読みください。


―――――(転載ここから)―――――――

福島の人達は(少なくとも私が話している福島市と伊達市の親戚とその周囲の人達は)、素人にお願いしてもいいから除染をして欲しいとは思っていないと思います。もちろんそういう人も中にはいると思いますが。実際には、いわゆる町内会でゴミ置き場の掃除を集まってやるように、除染作業は地域で自主的にやらざるを得ない状況も事実です。

個人宅はもとより、子どもの集まる場所ですら、市に除染依頼していてもなかなか実施されなく、今はどこの家の庭先にも高圧洗浄機を見かけます。何で自分たちが悪くもないのに、人の電気のために汚れたにも関わらず、自分たちが命の危険を冒してまで除染をしなくちゃいけないんだと憤っているのは確かです。

それでも、除染作業に来た人が県外の人や若いだったりすると、自分たちがそこに住んでいるのに「ちゃんとマスクしらんしょ」とか「服変えてかんしょ(服を変えて行きなさい)」とか言います。そして言ってから、「自分たちが住んでるところなのに、思わず言っちまうんだよねー」と苦笑いしています。作業を見ていて仕事だと解っていても申し訳なくて涙が止まらなかったと叔母から聞きました。

「国が奨励したボランティア活動」で若い人達が来たりしたら、それこそ胸を痛める福島の人達が多いだろうと思います。それどころか、これまで「私たちがやらなくていいはずのこと」と、舞い上がるホコリや草木を避けながら、業者の除染作業を家の中から眺めていた人達も、外に出ざるを得なくなるでしょう。「一緒にしなくてはいけないこと」になってしまうのです。

そして、私は同時にいくつかの懸念を抱いています。

(1)除染を「ボランティアの作業」と位置づけてしまったら、除染作業のためにかかった費用は自主判断とされ=補償対象外になってしまうのではないか。

(2)これまで福島では除染が進まないのは国や自治体と東電の責任だと、ある意味かなり強固に敵を認識していたと感じています。地元自治体や主張に対しての市民を守らない姿勢に対してもこれまでに感じたことのない不信感と怒りを現地では感じます。国が東電がすべきことがボランティア作業となることは、まさに受忍すべき責任となってしまわないか。

(3)それから、最も不安なのは今後、福島の人達には、広島長崎の被爆者に適用された、定期検診や医療保障などが絶対に必要になると、既に福島の人々は考えています。現時点で福島に留まっている人達は「逃げない」選択を(現状で)した人達です。その中で健康被害をどれだけ少なくするかを既に考えています。広島・長崎の被爆者の方々が、医療費免除と細かな定期健康診断による病気の早期発見で、結果的に現在長生きされているというデータがありますが、少なくともこの二つの補償は今一筋の蜘蛛の糸なのです。恐らくボランティアで人が入ってしまったら、複雑化は避けられずその補償も進めにくくなり、それどころか要求すらもしにくくなってしまうのではないか。

これらのことを考えると、ここまで諸々ショックなことはありましたが、この除染ボランティアのニュースは最も私を凹ませました。除染ボランティアが福島を救うなんていうのは、全く逆で救えるものすら救えなくすることなのです。

とにかく、一人もボランティアなど行ってほしくない。
そして、忘れて欲しくないとてもとても大事なことは「福島のために」ボランティアには行かないのだということを意識して欲しいことです。瓦礫処理の拒否もそうですが、言葉足らずに除染ボランティアの拒否を表明することは、解っていても更に福島の人達を落ち込ませ、それはまさに矛先をぶれさせかねません。

欲しいのはボランティア作業ではなく、「気持ち」なのです。だからこそ、コーディネーションのプロであるボランティア業界がきちんと声をあげるべきです。



私はこのメールを受け取って、とてもやるせない気持ちになりました。福島の人は、自分たちの健康については諦観しつつ、しかし外部から来るボランティアのことは気遣う優しさを持っておられる…。
ここまで追い詰められているのに、なんという強さなんだろうかと。
本当に、国や東電の対応は許せません。

確かにこの件は、声をあげればあげるほど、がれきや食品汚染と一緒で、国と東電が元凶なのに、被災地とそれ以外の対立であるかのようにとられるおそれがあります。
実際、そのような構図を「風評被害」と言って、マスコミも煽りがちです。

外部の人間が勝手なことを言って、被災地の方を傷つけてはいけないと思い、どうしても及び腰になってしまいます。しかし本音を言えば、除染ボランティアなど、狂気の沙汰としか思えません。

前回の記事での繰り返しですが、若者を教えている教育職の立場からも、そして、ボランティアを研究している研究者の立場からも、私は除染ボランティアに反対です。そして、福島の人のためにも声を上げなくてはいけないだろうと、頂いたメールを拝読し強く感じました。

除染作業を住民に強いている、そしてボランティアの善意につけ込んでいる政府の方針を認めることはできません。


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Comment

AYUHA says... "福島の人が強いのではない"
小言婆のような小姑のような揚げ足取りと言われても別にいいのですが、福島の人が強いのではありません。皆さん、想像してほしいのですが、自分が福島の人と同じ立場になったら、今、福島の人たちが置かれているアンビバレントな状況の中で、「よその人に迷惑をかけたくない」と強く思わない、ということはあり得るでしょうかね。この「人に迷惑をかけることが一番悪いこと」と徹底的に教育されている日本社会、それを日本人のネイチャーだと信じ込まされているこの状況において。そのような中で、自分のエゴイズムを最優先する人も大量にいて、結局「お人よしの貧乏人が一番損をする」というこの国の構造的問題において。福島の人たちが強いとか優しいというすり替えをしてはいけない。福島の問題を考える上では、これは、我々誰もが、状況が違えば抱えさせられてしまうような問題なのだ、という普遍化された認識を持つことが必要なのです。
2011.11.12 23:13 | URL | #- [edit]
0120 says... ""
コメントのコメントです。そういう日本人の文化を理解しながら、揚げ足を取ってしまうとは…。日本人らしい福島人への理解だと思いますがね。
2011.11.13 00:46 | URL | #- [edit]
徒然人 says... "桜井先生に同感です"
はじめまして。座間宮様のブログから参りました。私は桜井先生のご意見に賛同致します。また、コメント1にも共感します。現地にとってはトピックとなる現象を捉えて論ずる事は重要ですね。同時に普遍的な観点も無視できません。二律背反なのですが、福一問題については、日本の未来を見据えた価値観の発露と良識を根底に置いた論議の成熟が必要だと思量致します。突然、判断を要求される事態を迎え、政治も世論も追いついていません。科学のなし得る社会貢献と政治倫理、経済成長の意義が問われているようです。
2011.11.13 01:53 | URL | #- [edit]
yaeko says... "No title"
同じく福島県の人が特別優しいわけでも強いわけでもありません
土建関係の仕事にかかわっている友人が
除染利益にあやかろうとその話題で持ちきり・・・言っています
どこも人間同じレベルだと思います
本当の優しさは勇気を持って
子供、ボランテァに参加する若い人の為
声を上げることだとおもいます
2011.11.13 02:22 | URL | #- [edit]
miura1 says... "同感です"
ツイッターから来ました。
同感です。こういうやり方、本当に政府はいやらしく上手ですね。ある意味なめてかかっているのだろうな、と思う時もあります。
一方で、最初のコメントの方が書かれていることも、自分が普段から引っかかっている事に触れていて、強く共感しました。
こういう話題の中での強いとか優しいという表現は、ふくいちの作業員の方々を英雄視するのと同じ問題を引き起こす危険性があると感じます。
2011.11.13 11:22 | URL | #O8/iXGxY [edit]
sakunary says... "ありがとうございます"
多くの方にこの記事をご覧いただきまして、大変感謝しております。
その一方で、コメント欄では、「福島の人は強いか弱いか」といったような議論になっておりますが、そこは私の表現の至らない部分があったためと反省致しております。

なお、私はこの除染ボランティアというものを本気でやめさせたいと思って、この記事を書きました。
もしよろしければ、そのためのお知恵も頂ければうれしく存じます。

もちろん、コメント欄にはどんな感想でも(個人の人格を誹謗中傷するものを除き)、掲載させていただきます

どうぞよろしくお願いいたします。
2011.11.13 13:50 | URL | #- [edit]
そうだ says... "すり替え"
除染ボランティアってオリンピックのボランティアみたいだけど、責任のすり替えでしかないですね。
というか、主たる動機が政府がお金なし、なんだから、もうセコ過ぎると思うが。

また、補償関連でボランティア除染拒否することは地方の瓦礫受け入れ拒否=土地放射能維持=被爆継続=政府補償要求根拠としているようなのですが、除染したいのか、どうか解らなくなっています。
ボランティア=無償行為を要求されるなら、原発の撤去を代償として求めますね。
原発は、お金が掛かりすぎのシステムですから。

当地の方々の立場にはなりきれませんが、加害者の責任転嫁すり替えと被害者の補償対策方針とが真っ向ぶつかっていますね。

どのみち放射能汚染被害という利権構造が出来てしまいましたからね。

若い人は放射能の影響を受け易いので、中高年を雇うほうが、雇用と健康面で合理的です。
2011.11.13 20:29 | URL | #JalddpaA [edit]
徒然人 says... "除染について"
おはようございます。除染ボランティアについては、政府の考え方そのものが破綻しています。無給かつ自弁で若者たちに指導育成せず被曝させています。まさか彼らに子供を作るなとはいえない。では、彼ら本人の医療・生活保障は、彼らの子供たちの医療・生活保障は。国がやろうとしている除染ボランティアは暴論です。日本中が被曝したと言っても、地理や気象により濃淡は生じます。
除染ボランティアを組織するとすれば、臨時雇用制として医療・生活保障を確実にした上で、最低賃金を支払うことです。そして、被曝との因果関係に関わらす無料医療とすること。もちろん、施行前にはきちんと講習を受けてもらうことですね。
よろしければ、私のブログ「放射線と被曝対策」のカテゴリ「除染作業」をご覧下さいませ。
2011.11.14 06:05 | URL | #- [edit]

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